ヴィンチェンツォ・イタリアーノのボローニャはなぜ「縦に速い」のか――1-4-2-3-1が変形するダイナミックなサイドアタックのメカニズム
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ヴィンチェンツォ・イタリアーノのボローニャは、なぜ「縦に速い」のか?
2025-26シーズンのボローニャは、ヴィンチェンツォ・イタリアーノの就任から1年あまりを経て、明確な「チームの色」をまとい始めています。
キーワードは「縦」「ダイナミズム」「サイド」。
ベースは1-4-2-3-1ですが、攻守の局面に応じて1-2-3-2-3、1-2-2-3-3、さらには1-2-1-4-3へと形を変えながら、縦方向の攻撃とアグレッシブな守備をくり返します。
試合を観ていると難しい理論に聞こえるかもしれませんが、一つひとつを分解すると「サッカーの基本」をとても丁寧に貫いているチームでもあります。
ここでは、ルカシュ・スコルプスキ、リッカルド・オルソリーニ、ニコラス・カストロ、シーヌトイェン・ダリンガ、レミョ・フロイラー、ミヒャエル・モロ、ジョヴァンニ・ファッビアンらを中心に、ボローニャがどのように攻め、どう守っているのかを、少し「一緒に学ぶ」感覚で追いかけてみましょう。
ボローニャの基本モデル:土台は1-4-2-3-1、頭の中は「1-2-3-2-3」
イタリアーノのボローニャは、基本布陣としては1-4-2-3-1。
しかし、ボールを持つと一気に変身します。
・攻撃時:1-2-3-2-3、あるいは1-2-2-3-3、状況によっては超攻撃的な1-2-1-4-3
・守備時:1-4-3-3、1-3-1-4-2、1-4-1-3-2
つまり、ポジション名よりも「ライン間に何人いるか」「サイドに何人いるか」が重視されているチームです。
あなたはサッカーを観るとき、フォーメーション図ばかりを気にしていませんか。
このボローニャを見ると、「数字」より「局面」を見る面白さを、子どもから大人まで一緒に学べるはずです。
スコルプスキから始まる“縦の物語”
ゴールキーパーのスコルプスキは、単なるシュートストッパーではありません。
彼の仕事は明快です。
「verticalizzare con lanci aerei verso lo spazio」 「スペースへ向けてのロングボールで縦に刺すこと」
ビルドアップでは、まずセンターバックへ足元のボールを預け、相手を引きつけてから縦への一発。
両足でのキック精度と、どのセンターバックに託すかの「読み」。
ここから、すでにボローニャの“縦への意志”が始まっています。
センターバックとサイドバック:攻撃のスタート地点としての「守備陣」
| 局面 | 基本配置 | 変形後 | 特徴・評価 |
|---|---|---|---|
| 守備時 | 1-4-2-3-1 | 1-4-3-3 / 1-3-1-4-2 | ◎ 4バックラインで中央縦パスを封鎖 |
| ビルドアップ | CB横展開+GK | 三角形でプレス誘導 | ◎ あえてプレスをかけさせる発想 |
| 攻撃展開 | 1-4-2-3-1 | 1-2-3-2-3 / 1-2-2-3-3 | ○ ライン間に人数を集め縦パスを優先 |
| 超攻撃時 | 1-4-2-3-1 | 1-2-1-4-3 | △ リスク高だが前線の厚みを最大化 |
| トランジション | ボール奪取直後 | 即カウンター(縦パス優先) | ◎ 「まず縦」が原則、無理なら落ち着かせる |
| サイド守備 | SB+CB連動 | 1対1→即2対1サポート | ○ 奪ったらそのままカウンターへ |
ヴィティク、ヘッゲム、ルクミ:幅を取り、縦を狙うセンターバック
センターバックのヴィティク(右利き)、ヘッゲム、ルクミ(ともに左利き)は、守るだけでは役割を果たしたとは言えません。
ボール保持時、彼らはまず横に広がり、フルバックのスペースにまでポジションを広げます。
その結果、サイドバックのゾルテア、リコヤニス、ミランダが一列押し上げられ、数的優位を作りながら前進できるのです。
相手のプレスが来れば、近くの中盤へ、あるいはセンターバック同士でボールを回し、タイミングを伺います。
相手が出てこなければ、「condurre palla」――ボールを運びながら前進し、より前で縦パス、あるいはロングボールを選択します。
「Tutti e tre sono forti nei duelli uno contro uno」 「3人とも1対1のデュエルに強い」
守備の強さがあるからこそ、大胆に前進できる。
守る力と攻める勇気がセットになっているのが、このボローニャのセンターバック陣です。
- フォーメーション数字より「ライン間の人数」を数える習慣を持つ — ボローニャは4-2-3-1の「数字」より「各ラインに何人いるか」でビルドアップを設計する。練習中に配置図ではなく密度で局面を語る言葉を使う。
- GKをビルドアップの起点として意図的に設計する — スコルプスキの役割のように、GKが「どのCBに出すか」「いつ縦パスを入れるか」を判断する練習メニューを組み込む。GKと2CBの三角形でプレス誘導から始める形を繰り返す。
- サイドバックに「いつ上がるか」の判断基準を言語化して伝える — ボローニャのSBはボールが3列目に入った瞬間に攻撃参加する。「3列目にボールが入ったら上がっていい」というシンプルなトリガーを設定し、繰り返し確認する。
ゾルテア、リコヤニス、ミランダ:サイドからゲームを変える「低い位置のウイング」
右のゾルテア、左のリコヤニスとミランダ。
彼らは、ボール保持時には高い位置を取り、ボールが3列目に入った瞬間、迷いなく攻撃に参加します。
「attaccare la profondità」 「背後のスペースを突くタイミングを読む」
この読みが優れているため、速いテンポのワンツーやカウンターでも一気に前線へ飛び出していきます。
一方、守備では4枚のラインを作り、中央の縦パスコースを消しながら、1対1での球際の強さを発揮。
あなたがサイドバックを見ているとき、「守備専門」「攻撃専門」と分けて見ていませんか。
ボローニャのサイドバックは、どちらかではなく、両方を高いレベルで求められているポジションです。
フロイラー、モロ、ファッビアン:止まらない中盤の「動き」と「縦パス」
中盤の核となるのが、フロイラー、モロ、そしてファッビアン。
さらに途中出場でオドゴーア、ポベガも加わります。
共通しているのは、「常に顔を出すこと」と「前を向いたら縦を狙うこと」。
「smarcarsi costantemente per offrire linee di passaggio」 「パスコースを作るため、常にマークを外して動く」
ボールを受けると、できるだけ素早く縦へ。
それが難しければ、サイドチェンジでウイングを生かす。
特徴的なのは、プレー自体は「1〜2タッチでシンプル」、しかし運動量は「ずっと動き続ける」こと。
シンプルなサッカーほど、走る量と判断の速さが求められます。
特にファッビアンは「エリアに入っていく」中盤として、ボックス内まで顔を出し、シュートや折り返しに絡む存在です。
オルソリーニとカンビアーギ:サイドで輝くボローニャの「顔」
このチームの攻撃の多くは、サイドから生まれます。
右のオルソリーニ、左のカンビアーギという2枚のウイングは、どちらも「逆足」でプレーするのが特徴です。
「giocano a piede invertito」 「逆足サイドでプレーする」
これにより、サイドで受けて中に切れ込み、シュートを狙う形が自然に作られます。
オルソリーニは、ボールを得意の左足へ移してからのシュートが最大の武器。
カンビアーギは、ドリブルでの突破力で違いを作るタイプです。
ボールが逆サイドにあるときには、彼らは「第二のストライカー」のように、ファーサイドへの斜めのランを繰り返します。
あなたが少年・少女サッカーをしているなら、「サイドにいたらずっとタッチライン際に立っていればいい」と思っていませんか。
ボローニャのウイングたちは、ワイドに張るだけでなく、中へ入り、逆サイドのゴール前にも顔を出す。
サイドアタッカーの理想像の一つが、ここに見えます。
カストロとダリンガ:縦パスの“終点”であり“起点”でもある2トップ
9番カストロと24番ダリンガ。
彼らには、「どんな縦パスも受ける準備をしておくこと」が求められています。
ロングボール、速い縦パス、難しいボールであっても、体を使ってキープし、時間を作る。
「mantenere il possesso anche in inferiorità numerica」 「数的不利でもボールを失わない」
カストロは足元の技術と1対1の仕掛け、そして周りを使う“司令塔型ストライカー”。
ダリンガは、空中戦に強く、クロスやロングボールのターゲットとして機能します。
象徴的なのが、コモ戦での決勝点の場面です。
「una verticalizzazione aerea in cui l’attaccante Castro contro tre difensori riesce a coprir palla」 「3人のDFに囲まれながら、カストロがロングボールを収めてキープし」 「scaricarla sul lato destro per Orsolini」 「右のオルソリーニへ叩いて」 「che… di prima la mette sul primo palo」 「彼がワンタッチでニアサイドへ決めた」
ここには、ボローニャの攻撃コンセプトが凝縮されています。
縦へのロングボール。 前線のキープ力と落とし。 サイドの高い決定力。
あなたはストライカーを「点を取る人」とだけ捉えていませんか。
カストロのように「起点になれるストライカー」がいるからこそ、チームとしての攻撃が成り立つのだと分かるはずです。
ボール保持のフェーズ:ビルドアップ、展開、フィニッシュ
- ウイングは「中に切れ込む」ことで相手守備を崩す — オルソリーニとカンビアーギは逆足サイドに配置され、中へ入ってシュートを狙う。サイドの選手は幅を取るだけでなく、タイミングよく中央へ動くことで守備を広げられることを観戦時に確認しよう。
- ストライカーの仕事は「点を取る」だけでなく「起点になる」こと — カストロがコモ戦で3人に囲まれながらロングボールを収め、オルソリーニへ叩いた場面がその典型。ボールを受けてはたく役割を理解するとチームが変わる。
- 観戦時は「同じ形を何度も繰り返しているか」を意識して見る — ボローニャは「pazienza(忍耐)」を持って同じ攻撃を繰り返す。試合中に「また同じ形だ」と感じたら、それは意図的な戦術なので、成功するまで何回繰り返すかを数えてみよう。
ビルドアップ:相手のプレスを“利用する”ボローニャ
ボローニャのビルドアップは、あえてセンターバックにボールを預け、相手を引きつけるところから始まります。
CB同士とGK、そして降りてくるプレーヤー(フロイラーかモロ)で三角形を作り、「パスを回しながら相手を寄せる」ことが目的です。
相手が食いついてきた瞬間、「palla aperta」――前を向ける状態を作り、そこから一気に縦のロングボール。
プレスをかけられたくないのではなく、「プレスをかけさせたい」。
その発想の違いが、このチームの特徴です。
展開(スヴィルッポ):中盤は「1〜2タッチ」+「ポジションチェンジ」
中盤の選手たちは、基本的に1〜2タッチで素早くボールを離します。
ただし、その裏で行っているのは、絶え間ないポジションチェンジ。
「non si vedranno mai piatti e nemmeno statici」 「フラットにも、静止した状態にも決してならない」
常に段差をつけて立ち、同じ場所に留まらないことで、相手のマークをずらし、ライン間にスペースを作り続けます。
ボールはシンプルでも、動きはシンプルではない。
この組み合わせが、縦への素早い展開を支えています。
フィニッシュ:課題と光、そしてオルソリーニとカストロ
フィニッシュの局面では、ボローニャはまだ発展途上の部分も抱えています。
セスク・ファブレガス率いるコモのコンパクトな中央守備に対して、サイドから何度も「外から中へ」の動きを繰り返しました。
・ウイングが外から中へ入り、第二列からシュート
・外側をサイドバックが追い越してクロス
・中央ではカストロ、ダリンガ、さらに中盤の飛び出しで数的同数〜優位を作る
しかし、
「Poca lucidità nel finalizzare sul secondo palo」 「セカンドポストでのフィニッシュにおける冷静さが足りない」
という弱点も見えました。
それでも、カストロとオルソリーニが決めた形は、チームの狙い通りの“理想形”。
何度も狙いを繰り返し、最後に報われる。
「pazienza e tranquillità nel riprovare a continuazione l’attacco」 「何度でも同じ狙いを落ち着いてやり続ける忍耐」
あなたが試合を観ていて、「また同じ形か」と感じる場面。
そこには、しっかりとした戦術的な「意志」が隠れていることがあります。
サイド攻撃とサイド守備:ボローニャの“真の強み”
攻撃のサイド:オルソリーニ、カンビアーギ+ゾルテア、リコヤニス
「La lateralità del Bologna è il punto forte」 「ボローニャのサイド攻撃こそが最大の強み」
右はゾルテアとオルソリーニ。 左はリコヤニス(あるいはミランダ)とカンビアーギ。
高い技術と判断力を持つ4人が、固定された役割ではなく、状況に応じて入れ替わり続けます。
・ウイングが外、サイドバックが中に絞る
・ウイングが中へ入り、サイドバックが外をオーバーラップ
・ストライカーがサイドに流れ、ウイングが中のストライカー役に
「scambi continui tra esterno alto-basso, esterno-interno e attaccante-esterno」 「高い位置のサイドと低い位置のサイド、サイドとインサイド、FWとサイドの間で絶え間ないポジションチェンジ」
それらの動きは、あらかじめ“決められた形”だけではなく、相手の守り方を見ながら選択されます。
この「自由度の高いサイドアタック」が、ボローニャの得点力を押し上げる重要な武器です。
守備のサイド:1対1で奪いきる強さ
一方で、守備になってもサイドの重要度は変わりません。
ゾルテア、リコヤニス、そしてときにはオルソリーニやヴィティク、ヘッゲムまでもがサイドに引き出される場面で、「まず1対1で潰しに行く」姿勢が徹底されています。
「un primo pressing aggressivo cercando di conquistare palla attraverso un uno contro uno」 「1対1でボールを奪いに行く、非常にアグレッシブな最初のプレッシング」
もし1人で難しければ、すぐに2対1のサポートを作る。
ボールを奪えれば、そこからは“即カウンター”。
ここでもキーワードはやはり、「縦への速さ」です。
守備とトランジション:前から奪い、奪ったら一気にゴールへ
前線からの守備:カストロ、オルソリーニ、カンビアーギの役割
ボローニャの守備は、前線から始まります。
カストロやダリンガは、相手CBに対してただ走るだけではありません。
「indirizzandolo verso le corsie laterali」 「相手をサイド方向へと追い込む」
この“方向づけ”を行いながら、オルソリーニやカンビアーギが連動してパスコースを消し、縦パスを封じます。
中盤のフロイラー、モロ、ファッビアンも、最も近い選手が強く寄せ、周りがスペースを消す形で「2対1」の状況を作り、ボールを奪いに行きます。
最終ラインの対応:状況に応じて“出るか、下がるか”
・サイドでボールを持たれたら、SBが長い斜めのカバーを取り、CBは中央を締めて下がる
・中央にロングボールが入れば、ヴィティクやヘッゲムが強く前に出て1対1、あるいは2対1で対応
・中央でボールを持たれたときは、ラインをコンパクトにして、人について強く当たる
大事なのは、「2人のCBは必ず残る」という原則を守りながら、その中で誰が“前に出るか”を決めていることです。
中盤も、サイドに引き出されたSBの背後をカバーするなど、連動したスライドが徹底されています。
トランジション:ボールを失った瞬間と奪った瞬間
守備への切り替えでは、もし相手がボローニャ陣内に攻め入ってきたら、CBの一人が前に出てボールホルダーに対応し、その背後をSBか中盤の選手がすぐ埋めに入ります。
攻撃への切り替えでは、
「Il primo obiettivo da sfruttare è il contropiede facendo subito una verticalizzazione」 「最初に狙うべきはカウンター。すぐに縦のパスを出すこと」
とされており、まずはカストロやウイングに速いロングボール。
もしそれが無理であれば、一度ボールを落ち着かせ、またビルドアップからやり直します。
ボローニャの強みと弱み:どこを伸ばし、何を学ぶか
強み(Strengths)
・サイドでのポジションチェンジとローテーション
・ラインを一気に飛ばすロングの縦パス
・走力とアグレッシブさを兼ね備えた中盤
・敵陣3分の1でのポジショニングと厚み
・サイドの幅を保ちつつも、攻撃では数的優位を作れる構造
弱み(Weaknesses)
・セカンドポストでのフィニッシュ精度と落ち着き
・中央ゾーンでの崩しのバリエーション不足
・FDNP(自陣深い位置でボールを持たれたとき)におけるSB背後のスペース管理
・中盤のカバーが一瞬遅れる場面があり、危険な縦パスを許すことも
あなたがコーチやアナリストを目指しているなら、この「強みと弱みの整理」は、チーム分析やxG(期待値ゴール)のデータを見るときの基礎になります。
ボローニャのxGを想像してみると、
・サイドからのクロスやカットインシュートで比較的高いxG
・中央からの崩しは少なく、シュート数やxGはサイド寄り
という傾向がイメージできるはずです。
あなたなら、このボローニャに何を足す?
イタリアーノのボローニャは、明確なモデルと原則を持つチームです。
・GKからのビルドアップで相手をおびき出し、縦パスを通す
・サイドでの連係と個の力で局面を打開
・前線からの守備でボールを高い位置で奪い、すぐにゴールを目指す
一方で、中央の崩しや、セカンドポストでの決定力向上といった課題も見えています。
もしあなたがボローニャの選手だったら、どのポジションで、この戦術の中でどう成長したいと思うでしょうか。
もしあなたが監督だったら、このチームにどんな「一手」を加えたいでしょうか。
縦に速いサッカーは、見ていてワクワクします。
その裏にある「準備」と「原則」を知ることで、サッカー観戦は、もっと深く、もっと楽しくなるはずです。
最後に、ボローニャの姿勢に重なる言葉で締めくくりたいと思います。
「Success is the sum of small efforts, repeated day in and day out.」 「成功とは、小さな努力を、日々くり返し積み重ねた結果である。」
