アタランタ新時代──ユーリッチ体制がもたらす戦術的進化と継承
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新たな「アタランタ流」への進化──イヴァン・ユーリッチ監督がもたらす戦術的継承と変革
2024/25シーズンの節目とともに、アタランタ・ベルガマスカ・カルチョは長きにわたりチームを指揮したジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督の後を継ぎ、イヴァン・ユーリッチ監督という“教え子”ともいえる指揮官にチームを託しました。
2003年、クロトーネで始まった師弟関係は、ジェノアやインテルを経て、ついにアタランタという舞台で再会を果たします。 9年にわたるガスペリーニ流の集大成の先へ──クラブが選んだのは“戦術的連続性”。 しかし、その継承は「全てをなぞる」だけではありませんでした。 ユーリッチ監督の新たな一歩が、アタランタにもたらした変化とは何でしょうか。
ガスペリーニからユーリッチへ──継承される戦術的DNA
「私たちのサッカーは勇気と組織、走ることだ」── かつてガスペリーニ監督がこう語ったように、アタランタは強烈な縦への推進力と、“マンマーク”主体の守備を徹底する集団でした。
ユーリッチ監督もまた、3-4-2-1(場合によっては3-4-3)という可変型のフォーメーションを軸に、攻守での流動的なポジショニングとアグレッシブなプレッシング戦術を踏襲しています。
守備時には両ウイングが深く下がり5-2-2-1へと陣形を変化させ、マンツーマンの圧力を全体で発揮。 攻撃では、中央での細かいポジションローテーション、“最終ラインからの丁寧なビルドアップ”、そして幅を大きく使う展開が健在です。
その意味で、ユーリッチ監督は紛れもなく「ガスペリーニ・スクール」出身。 けれど、実際のピッチで表れるアタランタは微妙な違いを見せています。
| 観点 | ガスペリーニ(〜2024/25) | ユーリッチ(2025/26〜) | 継承/変化 |
|---|---|---|---|
| 基本布陣 | 3-4-2-1(可変) | 3-4-2-1 / 3-4-3 | ◎ 継承 |
| 守備思想 | ハイライン・マンマーク徹底 | マンマーク+状況で15m下げる | ○ 柔軟化 |
| リスク管理 | 前がかり優先 | 守備バランス優先 | △ 変化 |
| ビルドアップ | 最終ラインから丁寧に | 踏襲 | ◎ 継承 |
| 勝敗哲学 | 勇気・組織・走る | 勝てなければ美しさは意味なし | △ 現実主義化 |
ユーリッチがもたらした“慎重”と“柔軟”
ある分析者はユーリッチ体制をこう表現します。
「ユーリッチ監督はより現実的で、守備バランスを重んじる。全てをリスクに賭けて前がかりにならず、状況次第で一歩引く勇気を持たせている」と。
事実、失点リスクを冒してまで高いラインでマン2マンのデュエルを仕掛ける“超攻撃的守備”から、状況によってはラインを15mほど下げ、コンパクトな陣形でスペースを埋める“ポジショナルな守備”を混在させています。 もちろんこれは「絶対に引いて守る」ではなく、「隙あらば前で奪い返す」も維持しつつ、バランスを意識しているというスタイルです。
ユーリッチ監督自身、「守備の安定性は攻撃の確実性と直結する」と語るように、リスクの管理と柔軟な対応力がこのアタランタの肝ともいえるでしょう。
- 「戦術継承」は全コピーではない — 前体制の骨格を残しつつ、守備バランスなど1つの軸だけズラす設計思想。
- プレス完成度と対になる「引く選択肢」を並行準備 — 常に前で奪うチームを作る前に、引いて守る型も仕込む。
- マンマーク主体でも「リトリート合図」を事前共有 — 相手ビルドアップの強度に応じてライン変更できる合言葉を持つ。
攻撃構築──“全員サッカー”の深化
アタランタの攻撃は、短いパスとポジションの入れ替えが幾重にも絡み合う“多層構造”です。 例えば、センターバックの脇に中盤の選手が下がり、最終ラインで数的優位を作った上で前線へ繋ぎます。
「時にゴール前まで9人が入り、後方からも次々と選手が味方を追い越していく」──熱狂的な“全員サッカー”は健在。 ところが、“勝てなければ美しさは意味がない”こともまた、ユーリッチの信念でしょう。 必要に応じて守備ブロックを固めてカウンターで仕留める柔軟性が、これまでと違う顔を支えています。
- 同じ3-4-2-1でも性格は変わる — 布陣図より「誰が下がり、誰が前に残るか」の初期立ち位置を見る。
- マンマークは「誰を捨てるか」の選択 — カルネセッキの背後スペース管理が生命線。GK〜CBの連係を観察する。
- ドリブラー=ポジションローテ前提の選手像 — ルックマン/デ・ケテラーレ/スカマッカ型は「動き直し」が多い。
新生アタランタを彩る名手たち──個性派が織りなすタペストリー
ユーリッチ体制への変革は、選手たち一人ひとりの個性を最大限に引き出すことから始まりました。
ゴールキーパーのマルコ・カルネセッキは「冷静さとシュートストップのセンス」で信頼を集め、中盤ではマルテン・デ・ローンやジョゼ・エデルソンが潤滑油として躍動。 前線ではアデモラ・ルックマンやシャルル・デ・ケテラーレ、ジャンルカ・スカマッカらの多彩なドリブルやアタッキングで観客を魅了します。
また、ヨーロッパで注目される新戦力──ベストヤングプレーヤー候補のオディロン・コソヌ、そして広大なピッチを縦横無尽に駆けるダヴィデ・ザッパコスタらはまさに、この“全員サッカー”の新たな担い手といえるでしょう。
変わる主戦術、変わらぬ熱狂──数字が語るアタランタ
分析志向のファンや指導者が特に注目するのは、xG(エクスペクテッド・ゴール)や走行距離といった客観的な数値です。
「支配的であれ、だがリスクを恐れるな」
──攻撃時には、中央の崩しから左右のスペースを活かしたクロスで決定機を作り出す場面が頻出。 xGなどの統計を見ると、決して“圧倒的支配”ではなく、効率良くゴール前でチャンスを創出していることが伺えます。
守備では全体の走行距離をやや抑えつつ、切り替えの局面に爆発的なスプリントが見られる…データの裏付けも、戦術的進化の証です。
私たちはどこへ向かうのか?
9年にわたるひとつのサイクルが終わり、今、新たなリーダーと共に歩み始めたアタランタ。 その戦術は、連続性と変革の共存、確かな「進化」の物語でもあります。
ファンの皆さんは、“攻めて守るサッカー”が少し落ち着きを増したことにどんな想いを抱くのでしょうか。 あるいは、目の前で繰り広げられる鋭いカウンターに歓喜し、堅牢な守備に安堵するのでしょうか。
指導者やサッカー少年たちはどう受け止めるでしょう。 選手たち一人ひとりのポテンシャルを最大限に引き出す戦術、リスクとリターンを天秤にかける判断力…「チームを勝たせる」ための新しいアイデアは、あなたの日常にもなにかヒントを与えてくれるかもしれません。
進化を続ける信念
偉大な哲学者、エリック・カントナの言葉を最後に記します。
“Vous pouvez changer de femme, de politique, de religion, mais jamais, jamais vous ne pouvez changer votre équipe de football.”
「妻や政治、宗教は変えられるけれど、決して、決して、あなたのフットボールクラブを変えることはできない。」
新しく生まれ変わるアタランタに、私たちの情熱と声援はこれからも変わらず注がれ続けるでしょう。 ピッチの上で進化し続ける“ネラズーリ”。 その未来に、私たちはどんな夢を見られるでしょうか──。