スパレッティ体制のユベントスは何が変わり、何が変わっていないのか──3-4-2-1の上書きと微調整から読み解く新機軸
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スパレッティ・ユベントスは、なにが「新しく」て、なにが「変わっていない」のか

ルチアーノ・スパレッティがユベントスを率いる2025-26シーズン。 多くのファンが「どんなサッカーになるのか」を楽しみにしている一方で、実際のピッチ上では、意外にも「大きな革命」より「上書きと微調整」が目立っています。
スタートの基本システムは3-4-2-1。 3バックに2枚のウイングバック、2人のトレクアルティスタの後ろに1トップ。 ここまでは、近年のユベントスでも見慣れた並びかもしれません。
しかし、よく見ると、その中身はかなりスパレッティ流に染まりつつあります。 その象徴が、テウン・クープマイナースのポジションです。
「クープマイナースが下がる」という、小さくて大きな革命
今季のユベントスを語るとき、まず外せないのがクープマイナースの最終ライン参加です。 ビルドアップ時、彼がディフェンスラインに降りることで、チームの「第一歩」の質が大きく変わりました。
記事の中では、彼の意図がこう表現されています。
「consentendo alla squadra di uscire con maggiore pulizia anche sotto pressione」 「プレッシャーを受けていても、よりクリーンに前進できるようにする」
後ろからの一手がうまくいかないと、どれだけ前に良い選手が並んでいても意味がありません。 ユベントスのセンターバック陣は、ブレーメル、ガッティ、ルガーニ、カリュル、ケリーと、どちらかといえば「フィジカル型」。 そこでスパレッティは、技術と視野に優れるクープマイナースを下げて、後方の「頭脳」として使う選択をしました。
ここには、単に選手のポジションを変えただけではないメッセージがあります。 「守りだけの3バックではなく、ボールを持つところから主導権を握る3バックにしたい」という意思です。
みなさんは、自分のチームで「後ろからの一手」を任せるなら、どのタイプの選手を置きたいと思いますか。 高さやスピードのあるCBでしょうか。 それとも、クープマイナースのような、キックと視野に優れた“後方レジスタ”でしょうか。
3-4-2-1から変形する「流動システム」
スパレッティのユベントスは、並びだけを見てもあまり意味がありません。 ボールを持っているとき、持っていないとき、それぞれでシステムが柔軟に変化するからです。
ボール保持時:3-4-3から3-1-3-2-1へ
基本は3-4-3。 しかし、1人のボランチが降り、ウイングバックが内側に絞ると、形はこう変わります。
3-1-3-2-1
たとえば、マヌエル・ロカテッリがDFラインの間に落ちることで、相手の1トップや2トップを引き付けます。 すると、中盤のスペースが空き、そこにケフラン・テュラムやアンドレア・カンビアーゾ、ウェストン・マッケニー、フィリップ・コスティッチが入り込み、中央で数的優位を作ります。
これまでのユベントスは、どちらかというと「サイドに預けて、クロス」という展開が多く、
「poca incisività centrale, gioco spesso prevedibile」 「中央での迫力に欠け、攻撃が予測しやすい」
という弱点がありました。 そこを、スパレッティはあえて「中」を使って打開しようとしています。
みなさんは、サッカーを見るとき、サイド攻撃と中央突破、どちらが好きですか。 ユベントスは今、その両方をバランスよく使えるチームへと変わろうとしています。
| 観点 | 就任前のユヴェントス | スパレッティ体制 | 評価 |
|---|---|---|---|
| ビルドアップ起点 | フィジカル型CB陣で構成(ブレーメル・ガッティ等) | クープマイナースがDFラインに降りて「後方レジスタ」として機能 | ◎ 質的向上 |
| ウイング型選手の配置 | タッチライン際に張って待つ役割 | ユルディズ・コンセイソンが内側に動き、WBが背後スペースを利用 | ◎ 新しい連携 |
| 中央攻撃の迫力 | 「予測しやすい」と評された弱点 | ロカテッリが降りて中盤数的優位を作り中央突破を増やす | ○ 改善中 |
| FWの役割 | エリア内で構えるフィニッシャー中心 | ビルドアップ参加・ライン間降り・ポストプレーも求められる | ○ 役割拡大 |
| 守備時の形 | 固定的なブロック守備 | プレス時4-4-2・撤退時5-4-1と状況で使い分け | ○ 柔軟化 |
| プレッシングの精度 | (課題として特記なし) | 「最初のプレッシングが整っていないことがある」 | △ 改善途上 |
| ブレーメル不在時の守備 | (比較記録なし) | ラインが低くなり積極性が落ちる依存度の高さが露呈 | △ リスク要因 |
ボール非保持時:4-4-2から5-4-1へ
守備時も、形は大きく変化します。
・前からプレッシングに行くとき:4-4-2、あるいは4-3-1-2 ・相手に前進されて自陣に引いたとき:5-4-1
前線では、ドゥシャン・ヴラホヴィッチが「プレッシングの第一歩」となり、ケナン・ユルディズやフランシスコ・コンセイソンがそれに連動して前に出ます。 その背後では、ロカテッリとテュラムが相手の中盤、とくにレジスタをつぶしに行きます。
これがうまくハマると、相手はビルドアップでミスをしやすくなり、そのままショートカウンターからチャンスが生まれます。 現代サッカーでは、こうした「高い位置での即時奪取」から、多くのxG(期待値ゴール)が生まれていることがデータからも分かっています。
とはいえ、常に完璧ではありません。 プレッシングの連動が遅れたり、誰が出て、誰が残るのかが曖昧になると、
「prima pressione non sempre coordinata」 「最初のプレッシングが、いつも整っているとは言えない」
という弱点が顔を出します。 ここは、スパレッティと選手たちが、時間をかけて擦り合わせていく部分でしょう。
外に開くだけじゃない、ユルディズとコンセイソンの「新しい役割」
ユルディズとコンセイソンの名前を聞くだけで、ワクワクする方も多いのではないでしょうか。 ドリブル、1対1、ラストパス。 彼らは、いわば「ひらめきの源」です。
これまでのウイング型の選手であれば、タッチライン際に張ってボールを待つのが基本でした。 しかし、スパレッティはあえて彼らに「中に来る」ことを求めています。
「non sono più vincolati a mantenere la posizione larga」 「もう、ずっと幅を取って待ち続ける必要はない」
彼らが内側に寄ると、相手のサイドバックやCBがついてきます。 すると、その背後に大きなスペースが生まれ、そこへカンビアーゾやマッケニー、コスティッチなどのウイングバック、あるいはテュラムが走り込んでいく。 ピッチの同じ場所に、別の選手が別のタイミングで現れることで、攻撃はより読まれにくくなります。
ボールを持つユルディズ、追い越すカンビアーゾ、サポートに顔を出すロカテッリ、ペナルティエリア内で構えるヴラホヴィッチ。 1つのサイドで、4人が連動するシーンを、みなさんはもうイメージできるでしょうか。
ヴラホヴィッチとジョナサン・デイビッド、「点を取る人」から「つなぐ人」へ
前線では、ヴラホヴィッチ、ジョナサン・デイビッド、アルカディウシュ・ミリクと、多彩なFW陣がそろっています。 彼らに求められているのは、単純な「フィニッシャー」ではありません。
「partecipare alla fase di costruzione, abbassandosi tra le linee」 「ビルドアップにも参加し、ライン間に降りてパス回しに加わること」
ポストプレーで味方を使い、ワンタッチで落とし、裏へ流し、クロスの起点になる。 ときには自ら中盤まで降りて、ボールを落ち着かせる役目も担います。
点を取るだけを求められるストライカーから、点も取れて、チームの攻撃全体を「つなぐ」ストライカーへ。 これは、子どもたちにも伝えたい視点です。 フォワードだからといって、ゴール前に立っているだけでは、もう現代サッカーでは通用しません。
残された課題:「焦りのカウンター」と「ブレーメル不在問題」
ここまで読むと、スパレッティ・ユベントスは完璧に近いチームのように感じられるかもしれません。 しかし、当然まだ課題もはっきりしています。
- ビルドアップの「頭脳」役を後方に置く — クープマイナースをDFラインに降ろして技術と視野でボールを前進させたように、身体能力よりもキックと判断力に優れた選手を最終ラインのパス出し役として設定し、後ろからの組み立てを練習で繰り返す。
- 「幅を取らなくていい」とウイングに伝える — ユルディズ・コンセイソンへの「内側に来ていい」指示のように、選手が固定ポジションから解放されたときに生まれるスペースと連鎖を練習で体感させる。「外で待て」だけがウイングの役割ではない。
- FWに守備参加とビルドアップ参加を課す — ヴラホヴィッチ・デイビッドらにライン間降りとポストプレーを求めたように、FWがエリア外でも動くことで攻撃全体がつながることを具体的な動きで練習中に示す。
攻撃の課題:速攻とポゼッションの「スイッチ」
ボールを奪った瞬間に、すぐ縦に蹴ってカウンターを狙う。 この「前への速さ」は、ユベントスが以前から持っている大きな武器です。
一方で、
「talvolta con eccessiva frenesia」 「時に、過度なまでの焦りを伴って」
と表現されるように、落ち着いてボールを保持して試合をコントロールする、という選択肢を捨ててしまう場面もあります。
スパレッティが向き合わなければならないのは、 「今は走るべきか、握るべきか」 その見極めの精度を、チームとしてどう高めていくか、というテーマです。
- クープマイナースがどこにいるかを最初に確認する — 試合開始直後にクープマイナースがDFラインに降りているかを確認するだけで、チームのビルドアップの意図が読めるようになる。降りていれば「後ろから丁寧に組み立てようとしている」サインだ。
- ユルディズは外か内かを追う — ユルディズが内側に来たとき、その背後でカンビアーゾやコスティッチがオーバーラップしているかを見ると、「連動攻撃が機能しているか」を実感できる。
- ボール奪取後に「走るか、握るか」を見る — スパレッティが取り組む「速攻と保持のスイッチ精度」の課題として、ボール奪取後に縦に蹴るか一度つないでから展開するかを観察すると、戦術の理解が深まる。
守備の課題:ブレーメル不在時のリスク管理
守備面では、ブレーメルの存在感が、改めて浮き彫りになっています。
「l’assenza di Bremer ha ridotto alcune certezze del reparto」 「ブレーメルの不在は、守備陣のいくつかの確信を失わせている」
彼がいるときのDFラインは高く、相手の背後へのボールにも、強気に対応できます。 しかし、彼がいないとき、ラインはやや低くなり、積極性も一段階落ちてしまう。 これは、どのクラブでも起こり得る「キープレーヤー依存」の一つのかたちです。
みなさんの好きなチームにも、「この選手がいないと、守備が不安になる」という存在はいるのではないでしょうか。 そこをどう埋めていくのかは、選手層の問題であると同時に、戦い方そのものの問いにもつながります。
スパレッティ・ユベントスは、私たちに何を教えてくれるのか
改めて整理すると、スパレッティのユベントスには、次のような特徴があります。
・3-4-2-1をベースに、状況に応じて3-4-3、3-1-3-2-1、4-4-2、5-4-1と自在に変化する柔軟性 ・クープマイナースの最終ライン参加によるビルドアップの質向上 ・ユルディズ、コンセイソンらの「内側への動き」で生まれる、サイドと中央の新しい連携 ・ヴラホヴィッチ、デイビッドらFWの、ビルドアップ参加とポストプレーの重要性 ・即時奪回と高い位置でのプレッシングから、多くのチャンスを生み出そうとする姿勢
同時に、
・強いプレッシングを受けたときのビルドアップの不安定さ ・ボール循環の遅さから、前線の選手を活かしきれない場面 ・プレッシングの連動不足 ・ブレーメル不在時の守備の不安定さ
といった課題も、はっきり見えています。
それでも、こうした「理想と現実のあいだ」で揺れ動きながら、チームは少しずつ完成に近づいていきます。 戦術の細部を知れば知るほど、試合を観るときの視点も変わってきます。
・いまクープマイナースはどこに立っているのか ・ユルディズは外で待っているのか、中に来ているのか ・ヴラホヴィッチはエリア内だけでなく、どれだけビルドアップに関わっているか ・チームは、ボールを奪ったあと「走る」のか、「落ち着かせる」のか
次にユベントスの試合を観るとき、こうしたポイントに少しだけ意識を向けてみてはいかがでしょうか。 お子さんと一緒に観ている方なら、「今は何の形に見える?」と問いかけてみるのも、楽しいサッカー学習になるはずです。
変化を恐れないチームに、変化を楽しむ視点を

戦術が高度になるほど、サッカーは難しく感じられるかもしれません。 しかし、その裏側には、「どうすれば、この選手たちがもっと輝けるか」を考え続ける監督の思考が隠れています。
ユベントスの選手たちもまた、新しい役割、新しい動き、新しい判断基準に、毎試合のように挑戦しています。 その姿に、自分自身の勉強や仕事、部活動を重ねてみると、サッカーは単なるスポーツ以上の意味を持ち始めます。
最後に、チーム作りと成長のプロセスにぴったりの言葉を添えたいと思います。
「Il successo è la somma di piccoli sforzi ripetuti giorno dopo giorno.」 「成功とは、小さな努力を日々積み重ねた結果である。」
スパレッティとユベントスが積み重ねる「小さな努力」を、私たちも一緒に追いかけていきましょう。 その過程こそが、サッカーを観る喜びそのものなのかもしれません。
