ウェストハム、アカデミー魂で再出発──クラブへの愛と内部昇格が生む新時代
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ウェストハム・ユナイテッドの新たな船出──アカデミー出身コーチ陣の昇格に見るクラブ愛と挑戦
2024年6月、ウェストハム・ユナイテッドは大きな節目を迎えました。 新たに指揮を執るヌーノ・エスピーリト・サント監督の下、長年クラブを支えてきたアカデミーのコーチ4名、すなわちマーク・ロブソン、スティーヴ・ポッツ、ジェラード・プレンダービル、ビリー・ルピーヌが、ファーストチームのコーチ陣として正式に昇格し、監督を支えることとなったのです。 この人事は、ただの昇格発表ではありません。 クラブに魂を吹き込み続けてきた人々による、新たな挑戦のスタート地点とも言えるのです。
「彼らの仕事と献身に感銘を受けた」──ヌーノ監督のカルチャーチェンジ
ヌーノ・エスピーリト・サント監督は、クラブに来るたびに自身の信頼するスタッフを連れてくることで知られています。 ノッティンガム・フォレスト時代も、リュイ・ペドロ・シルバら馴染みのスタッフを帯同しました。 しかし、今回は大きな変化が見えます。 クラブに強く根ざしたコーチ陣をあえて登用し、その理由について以下のように語っています。
"I’ve been very impressed by their work, their knowledge and their commitment to West Ham United."(「私は彼らの仕事ぶり、その知識、そしてウェストハム・ユナイテッドへの献身に深く感銘を受けました」)
"They know the club, the players and the people here very well, and that’s a great strength for us going forward. They are a great asset: people who, beyond their knowledge and effort, feel for West Ham United. This is key to the challenge we are currently facing." (「彼らはクラブ、選手、そしてこの場にいる人々をよく知っており、それが今後の我々にとって大きな強みです。彼らこそが大きな財産です。知識と努力だけでなく、ウェストハム・ユナイテッドを心から愛している人たちです。これは我々が直面する挑戦において、非常に重要なことなのです」)
この言葉からは、クラブの伝統や人間関係、歴史を重視し、外部からの変革だけではなく「内部からの力」を大切にする想いが強く伝わってきます。 グローバル化とスピード重視が加速する現代フットボールの中で、あえて根を深く持った人々にかじを切らせる──これは新たなクラブ像への布石なのかもしれません。
| コーチ名 | クラブでの主なキャリア | 特徴・強み | 評価 |
|---|---|---|---|
| マーク・ロブソン | U21監督・ファーストチームコーチ | FA代表U17/U20指導経験・他クラブトップ実績 | ◎ |
| スティーヴ・ポッツ | 選手500試合超・引退後コーチ | ハマーズ・レジェンド、U12〜U23幅広く指導 | ◎ 継承 |
| ジェラード・プレンダービル | 世代別コーチ・FAユースカップ優勝 | U18全国制覇に貢献、ステップを踏んだ昇格 | ○ 柔軟化 |
| ビリー・ルピーヌ | GK育成部門・アカデミーGK統括 | 2020年よりGK統括責任者、生え抜きGK専門家 | ◎ |
| カイル・マコーリー(退任) | ヘッド・オブ・リクルートメント | 13年超ポッター監督と同行、監督交代で退任 | △ 変化 |
コーチ4人のウェストハムへの"帰属意識"
起用された4名はいずれもウェストハム愛、そしてクラブの若手育成に絶えず貢献してきた顔ぶれです。 まず、マーク・ロブソン。 かつてファーストチームコーチ、そしてアカデミーのU21監督として若手を鍛え上げてきました。
さらに、バーンネットやジリンガムなど他クラブでもトップチームの指導経験があり、FA(イングランドサッカー協会)でもU-17、U-20代表を指導した知見も加わりました。 スティーヴ・ポッツはどうでしょうか。 1985年から2002年にかけて、500試合以上もハマーズとしてピッチを駆け抜け、引退後もコーチとしてクラブに残り続けました。
「ハマーズ・レジェンド」と呼ぶにふさわしい存在であり、2011年以降はU-12からU-23まで幅広い世代で力を発揮してきました。 ジェラード・プレンダービルもまた、世代別のコーチとして地道にステップを踏み、特に2022/23のFAユースカップではアンダー18チームの一員として、若きハマーズを全国制覇へ導いています。
ビリー・ルピーヌは、生まれながらのウェストハム一家。 ゴールキーパー育成部門で頭角を現し、2020年にはアカデミーのGK統括責任者に登用されました。 この4人が育ててきた選手たちは、今やファーストチームで活躍する若手たちです。 彼らが指揮官の懐に飛び込み、直にトップチームを導く。 これは「アカデミー卒業生による新生ウェストハム」の象徴的瞬間なのかもしれません。
- クラブ内部の人材を積極評価する — 外部招聘に偏らず、自クラブのアカデミーや下部組織を熟知したコーチの昇格機会を設ける
- 指導者自身の「クラブ愛」を言語化して伝える — ヌーノ監督のように「知識・努力・愛情」を明確に評価基準として示し、スタッフの意欲を引き出す
- 長期育成実績を人事判断に組み込む — FAユースカップ優勝等の下部組織での成果をファーストチーム昇格の根拠として位置づけ、育成への動機付けを高める
イングランドらしい「クラブの心」を問う
イングランド・プレミアリーグはビッグクラブによる大型補強やグローバル戦略に彩られています。 しかし、ウェストハム、特に「アカデミー・オブ・フットボール」と言われ続けてきたこのクラブは、自前の才能を発掘し育てる文化と誇りがあります。
デクラン・ライスなど近年のビッグネームも下部組織から羽ばたきました。 その源泉が、選手たちだけでなく、コーチたちにも引き継がれていく。 「現場を知る人材」が指導の現場に立つこと──この意義は単なるノスタルジーでしょうか?
それとも、これからの時代のクラブづくりに欠かせないエッセンスなのでしょうか。 「大きなクラブにしたい」「結果を残したい」。 その思いの中で、皆さんなら「内部の人材を活かす」判断ができるでしょうか?
- アカデミーで積んだ経験は将来のキャリアにつながる — スティーヴ・ポッツのように選手引退後もコーチとして活躍できる道が、クラブへの貢献から生まれる
- 下部組織での実績がトップへの近道になる — プレンダービルのようにU18カップ制覇などアカデミーでの成果が昇格の根拠になるため、目の前の育成試合に全力を注ぐことが大切
- クラブへの「帰属意識」は強みになる — ヌーノ監督が語ったように「クラブをよく知り、選手と人々を熟知している」ことは大きな強みとして評価される
変化の中の別れ──ヘッド・オブ・リクルートメント、マコーリー氏退任
一方で、長年グラハム・ポッター監督と歩んできたカイル・マコーリー氏がクラブを去りました。 オステルスンド、スウォンジー、ブライトン、チェルシー、そしてウェストハムへとポッター氏の右腕として寄り添った人物です。
「13年以上ともに歩んできた」歴史は感慨深く、公式リリースでも「彼の献身と多大なる働きに感謝する」とねぎらわれました。 フットボール界のダイナミズムは時に厳しく、どれだけ貢献しても、組織改編や監督交代に伴い人員が入れ替わるもの。 それでも、「残された功績」はしっかりと称えたいものです。
人とクラブをつなぐ「想い」の価値
ウェストハムに起こっている変化は、決して派手な補強や爆発的な投資ではありません。 むしろ「どこまでもクラブに根ざし、ひたむきに努力を続けてきた人」を最前線に据える──そんな姿勢が際立っています。
読者の皆さん、サッカーに限らず、私たちの身近な社会でも「外部からの刷新」か「内部の知恵と愛着」かという問いは繰り返されます。 あなたがクラブのオーナーだとしたら、どちらを選びますか? 変革期のクラブに最も必要なものは、果たして何なのでしょう……。
選手もスタッフも、ピッチに立つその瞬間に懸ける情熱と「クラブ愛」。 それが重ね合わさって「歴史」や「伝統」になっていくのではないでしょうか。 最後に、クラブづくりの本質を見つめ直す名言を。
「Success is no accident. It is hard work, perseverance, learning, studying, sacrifice and most of all, love of what you are doing or learning to do.」(成功は偶然ではない。努力、忍耐、学び、研究、犠牲、そして何よりもやっていること、学ぼうとしていることへの愛情だ)──ペレ(元ブラジル代表サッカー選手)
あなたは、どのような「愛」を持って組織に関わっていますか? ウェストハムの今後の歩みを、温かく見守りたいと思います。
