TGG Live 2025が示す、サッカー現場における「人」の力と新しいつながりの未来
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TGG Live 2025が示すサッカー現場の未来──「人」が紡ぐ新しい価値とは何か
毎年恒例となったTGG(Training Ground Guru)カンファレンスが、2025年で3年目を迎えました。世界各国から多彩なクラブや団体が集い、話題はリーダーシップ、データ分析、リクルートメント、パフォーマンスと発展をめぐって展開されましたが、どのセッションにもひとつ共通する「金の糸」がありました。
それは「人と人との関係性」、すなわち、どんな最先端の技術や理論も、究極的には「人」がその中心にいるという事実に尽きます。サッカーは進化しても「人の心」や「つながり」なくして成功はありえない──。古くて新しいこの命題を考えさせてくれるカンファレンスとなりました。
データの背後にいるヒューマンストーリー──ノッティンガム・フォレストの挑戦
Day One(10月7日)の注目セッションのひとつが、ノッティンガム・フォレストのフットボールデータインサイト責任者であるフランシスコ・ベロ氏による、
“The humans behind the data”――「データの背後にいる人々」でした。
ビッグデータやAI、映像解析といったトレンドが急速に進む中、「人」を軸に据え直す重要性が語られました。技術がどれだけ進歩しても、そのデータを読み、判断し、戦略に落とし込むのも、そこにドラマや感動を生み出すのも結局は「人間」なのです。
この視点をもって日々の分析や戦術設計を見直すことが、ノッティンガム・フォレストのようなクラブが生き残り、成長を遂げるエネルギー源となるのでしょう。
| セッション/登壇者 | 所属 | テーマ | 人への視座 |
|---|---|---|---|
| フランシスコ・ベロ | ノッティンガム・フォレスト | データの背後にいる人々 | ◎ データを読むのは人 |
| アゼーム・アミール | イングランド盲目代表/起業家 | 先入観に挑み壁を打ち壊す | ◎ 経験の共有で心を動かす |
| コヒーシブ・コーチング・パネル | Lommel/元マンU/Teamworks | 監督・選手・データ科学者の協働 | ○ データを感性で磨く |
| ギグス/ストラッドウィック/ヒートン | マンチェスター・ユナイテッド | ユナイテッド流の人の育て方 | ◎ ファーガソン流人づくり |
| バターズ/コリス | ロンドン・シティ・ライオネス/バーミンガム | 女性リーダーとアカデミー復活 | △ 多様性で成長戦略を更新 |
| マイケル・コールフィールド | ブレントフォード | 偶然性に満ちた美しい競技 | ◎ サッカーは人のためにある |
障壁を壊し、心を動かす言葉──アゼーム・アミールの特別講演
Day Oneの締めくくりには、盲目のイングランド代表サッカー選手であり起業家でもあるアゼーム・アミール氏が登壇しました。
彼のテーマは、“Challenging perceptions and breaking down barriers”──「先入観に挑み、壁を打ち壊す」。
困難な状況に置かれても、視点を変え、既成概念を打ち壊して新しい扉を開く。その過程で生まれる人と人との共感や学びが、どんな時代のスポーツにも不可欠であることを、アゼーム氏自身の言葉と経験が証明しました。
現場で涙ぐむ聴衆もいたと言います。このような「心に響く経験の共有」こそ、サッカー界がさらに一体感と新しい創造へ歩み出す力になるのではないでしょうか。
- データを読む会議に人の話を混ぜる — 数字を出した後に選手の状態・感情・文脈を必ず議題化する
- 監督・選手・アナリストの3者定例を作る — ロメルFCパネルに倣い立場の違いを協働設計に変える
- 選手の心に火をつける語りを準備する — ファーガソン流のリーダーシップを日々の一言に翻訳する
首脳陣・選手・データサイエンティストはどう連携するか──Lommel、マンチェスター・U、Teamworksの共演
Day Two(10月8日)には、ロメルFCのリー・ジョンソン監督、元マンチェスター・ユナイテッド・イングランド代表のフィル・ジョーンズ、Teamworksのデータサイエンティストであるジョン=マーク・シスマン氏が「コヒーシブ・コーチング・パネル」で登壇。
「監督」「選手」「データサイエンティスト」——立場の異なる3者が、チームとしてどう協働し、現場でインパクトを生むか、「人」が介在するチームづくりの実際が語られました。
データはあくまで「道具」。
しかし、その数字を感性や対話で磨き上げてこそ、真に意味のある意思決定やパフォーマンスに結びつくのです。
- スタッツの裏側を想像する — 走行距離や期待値の数字の奥にある選手の努力や判断に目を向ける
- 壁を越えた人の物語を追う — アゼーム・アミールのように困難を力に変えた選手像をわが子と語り合う
- ネットワークの価値を教える — 上手くなるだけでなく、仲間とつながり学び合う姿勢を家庭で応援する
マンチェスター・ユナイテッド流、「人」を育てる伝統と革新
TGGカンファレンスの開催地・オールド・トラッフォード。まさにこの聖地ならではのセッションもありました。
プレミアリーグ最多タイトルホルダーのライアン・ギグス、元パフォーマンス責任者トニー・ストラッドウィック、クラブ育ちで現役選手のトム・ヒートンが、“Developing players the Manchester United way”−−「ユナイテッド流、人を育てる」ノウハウを紹介。
サー・アレックス・ファーガソンがいかに人を大切にしたリーダーだったか、過去から現在、そして未来へつながる「人づくり」の哲学が語られました。
「人の心に火をつけるのが最強のリーダーシップ」。
グローバルクラブでも、その根っこはやはり「人」に宿るのです。
女性の力がサッカー界を前進させる──ロンドン・シティ・ライオネスとバーミンガムの事例
2025年は女性サッカー、さらには男性サッカーの現場で活躍する女性にも強くフォーカスされました。
ロンドン・シティ・ライオネスのサラ・バターズ代表取締役は、「独立系クラブ」として女子スーパーリーグ(WSL)でいかに新機軸を打ち立てているかを解説。
バーミンガム・シティのルイザ・コリス氏は、イングランド唯一の女性アカデミーマネージャーとして、アカデミーを復活させカテ1復帰に導いた手腕を語りました。
男女の枠を越え、「人」や「多様性」が新たなクラブの成長戦略となる時代の到来を感じます。
世界をつなぐネットワーク──450名を超える参加者が語る交流の価値
TGG Live 2025にはイギリス、ドイツ、ベルギー、アメリカなど、国やクラブを超えて450名以上が集結しました。
サウサンプトンのエリオット・ステープリー氏は
“There have already been three or four conversations with high ups at different clubs I maybe wouldn’t have run into at different conferences so it’s great to have that access.”
「普段なかなか会えないクラブの上層部とも3、4回も話ができて、とても価値ある機会でした」とコメント。
ネットワーキングや食事の場が新しい発想や協業、そして「人同士」の信頼のベースになる──。
現場の率直な声が、その重要性を物語っていました。
ひとり一人の心に宿る「つながり」がフットボールを未来へ運ぶ
今回のカンファレンスではスカウティング、AI、血液データ、女性サッカー・選手育成、グローバルな経営戦略など幅広い話題が飛び交いましたが、根底にあるのはやはり「人と人」。
テクノロジーや理論の進歩がいくら加速しても、最終的にクラブも選手も、ひとり一人の「喜び」「成長」「共感」にこそ価値が宿るのだと感じさせてくれます。
ラストを飾ったブレントフォードの心理学者、マイケル・コールフィールド氏も次のように語りました。
It is a beautiful random game. I hope we can somehow keep it that way, because, as Sir Matt (Busby) said, it is about people.
サッカーとは美しく、偶然性に満ちたゲームです。マット・バスビー(元マンチェスターU 名将)も言いましたが、究極的には“人”のためにある。この本質を守り続けたいものです。
「どんな賢いAIも、どんな精緻な理論も、戸惑い、悩み、語り合い、支え合う“人”の存在を超えることはできません。」
私たちが次に学び、創造すべきサッカーの未来。それは、技術や分析を突き詰めた先にある「人と人の新しいつながり」のかたちではないでしょうか。
最後に、サー・アレックス・ファーガソンの残した言葉をご紹介したいと思います。
「チームの力とは、その核に“人”がいることで最大化される」——この原点を振り返り、どんな現場でも今日から「人に向き合うサッカー」を私たちも考えてみませんか?