0-3完敗の夜にマルセイユが見つけた「希望」と「宿題」
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リバプールに0-3完敗。それでも、オリンピック・マルセイユが得たものとは
スタッド・ヴェロドロームが本気を出す夜は、スタジアムそのものが一人の選手のように振る舞います。 サポーターの息遣い、コレオグラフィー、チャント。 そのすべてが「今日は歴史の一ページになる」と信じていました。
ただ、この夜に刻まれたスコアは、マルセイユにとって厳しい現実でした。 マルセイユ 0-3 リバプール。
それでも、この90分に「学ぶ価値があるもの」は、決して少なくなかったように思います。 子どもから大人まで、サッカーを愛する人が一緒に振り返ることで見えてくるもの。 今日は、そんな視点でこの試合を紐解いていきます。
ヴェロドロームがつくった“物語の舞台”
キックオフ前から、スタンドはすでに全開でした。 北側のコープには、サムライとヒップホップグループIAMを組み合わせた壮大なティフォ。 南側には、4人のビートルズが地元紙「ル・プロヴァンサル」を読み、その一面には2004年の伝説的な勝利を思わせる見出し。 そこにはこう書かれていました。
「Que l’histoire se répète(歴史よ、繰り返されよ)」
「歴史よ、もう一度起きてくれ」
さらに、9日前に亡くなった名将ローラン・クルビスへの大きな追悼も行われました。 スタジアム全体がひとつの物語を演じようとする。 そんな空気の中で、22人の選手がピッチに立ちます。
しかし、最初の数分で分かったのは、「雰囲気」だけではリバプールのようなチームは揺らがない、ということでした。
主役の一人、ドミニク・ソボスライという“悪魔”

試合を大きく動かしたのは、ハンガリー代表MF、ドミニク・ソボスライでした。 前半アディショナルタイム。 ゴールまでおよそ20メートルの距離で得たフリーキック。 多くの選手なら、壁の上を狙うか、ニアかファーへ強烈なシュートを選びます。
しかし、彼が選んだのは、そのどれでもない方法でした。
「Sous le mur(壁の下)」
「壁の下を通す」
壁がジャンプする一瞬のスキを読み、シュートは地を這うようにゴールへ。 これが今季のチャンピオンズリーグ4点目。 このワンプレーには、技術だけでなく、「状況を読む目」と「決断の速さ」が凝縮されていました。
サッカーを学ぶ子どもたちにとっても、そして大人にとっても、ここには大きなヒントがあります。 強い選手とは、シュートが強い選手ではなく、「最適な解決策を見つけられる選手」なのかもしれません。
グリーンウッド、グイリ…マルセイユの“あと一歩”
0-3というスコアだけを見ると、一方的な試合だったと思ってしまいがちです。 ですが、内容は「もし決まっていれば」という場面がいくつもあったゲームでした。
アミン・グイリの初先発が映したもの
チャンピオンズリーグ初先発となったアミン・グイリ。 前半27分、角度のない位置から放った強烈なシュートで、リバプールの守護神アリソンの反応を試しました。
「Je voulais juste frapper fort, sans réfléchir de trop.」
「とにかく強く打つことだけ考えた。あまり考えすぎずにね。」
彼のプレーには、若さと同時に「自分がこの舞台にふさわしいかどうか」を証明しようとする必死さがありました。 それは、結果こそ出なかったものの、マルセイユにとって今後の選択肢を増やす材料になったはずです。
| 場面・選手 | マルセイユ側 | リバプール側 | 評価 |
|---|---|---|---|
| 先制点の形 | ― | ソボスライが壁の下を通すFK(前半AT) | ◎ |
| グリーンウッドの反撃 | 52分・53分と連続シュート(アリソンがセーブ) | アリソンが好セーブ | ○ vs △ |
| グイリCL初先発 | 前半27分に強烈シュートでアリソンを試す | アリソンがセーブ | ○ |
| エキティケのシュート | 59分にポスト直撃 | ― | △ |
| トラオレの決定機 | 軸足バランスを崩し枠外 | ― | △ |
| 3点目 | フリンポングのクロスにルリがオウンゴール(72分) | フリンポングが右サイド突破 | ◎ vs △ |
| サラーのコンディション | ― | 全盛期のキレに遠い出来、右足ミスも目立つ | △ |
- ポスト・バーを外れたシーンを「ほぼ成功」ではなく「決め切れなかった失敗」として記録する — エキティケのポスト直撃やトラオレの軸足ブレは、チャンスを作る能力の証明である同時に、フィニッシュ精度の訓練不足を示している。チャンスの数と決定率を分けて評価する習慣を作る
- フリーキックの「意外な解法」を練習に取り入れる — ソボスライが壁の下を通すFKを選んだ判断は、選択肢の豊富さと状況判断から生まれた。FKの打ち方を壁の上・ニア・ファーだけでなく「壁の隙間・下」まで広げたメニューを設計する
- 苦しい時間帯に「エースが前に出る」場面を演出する練習を設計する — グリーンウッドが0-3の劣勢から連続シュートを打ちチームを鼓舞した姿勢は、エースの役割として指導に組み込める。負けている状況下でのポジション取りと積極性を養うシチュエーション練習を実施する
メイソン・グリーンウッドの“エースらしさ”
後半が始まると、スタジアムDJは「We Will Rock You」を響かせ、ヴェロドロームの熱はさらに一段階上がります。 その空気に最も反応したのが、メイソン・グリーンウッドでした。
52分、ドリブルで仕掛け、ペナルティエリア手前から右足を一閃。 アリソンは全身を伸ばしてなんとかセーブ。 その1分後には、今度は左足でシュートを放ち、相手守備陣に当たってコーナーへ。
「I tried to push the team, to show that we could hurt them.」
「自分が前に出て、チームはリバプールを苦しめられるってところを見せたかった。」
エースと呼ばれる選手は、必ずしも毎試合ゴールを決めるわけではありません。 ただ、苦しい時間にこそ「自分が流れを変える」と示そうとする。 その姿勢自体が、チームの財産になります。
“あと数センチ”に泣いたマルセイユ

サッカーは、時に本当に残酷なスポーツです。 マルセイユにとって、この試合がまさにそうでした。
59分、エキティケのシュートがポストを叩きます。 直後に訪れたハメド・ジュニオール・トラオレの決定機は、インサイドで冷静に流し込むだけに見えましたが、軸足のバランスを崩し、シュートは枠を外れます。
もし、あの場面が決まって1-1になっていたら。 もし、ポストではなくネットが揺れていたら。
そんな「もし」がいくつも頭に浮かぶ人も多いでしょう。
この「あと少し」という距離こそ、トップレベルの厳しさです。 選手にとってもサポーターにとっても、非常に苦い感覚ですが、同時に「どこを埋めなければいけないのか」が明確になる瞬間でもあります。
ルリのオウンゴールと、フリンポングのスピード
72分、試合を決定づけたのは、右サイドを駆け上がったジェレミー・フリンポングでした。 彼は、こういうタイプの選手です。
・迷いが少ない
・とにかく前へ運ぶ
・クロスもシュートも「強く、速く」
「Just run, don’t think too much.」
「走るんだ。あまり考えすぎないことだよ。」
そんな言葉が似合うようなプレー。 Igor Paixãoを振り切り、ゴール前へ強烈なグラウンダー。 反応したGKジェロニモ・ルリの手に当たったボールは、そのまま無情にもゴールへ吸い込まれていきました。
GKにとって、オウンゴールは最もつらい失点のひとつです。 それでも、ルリは試合中何度もチームを救うセーブを見せていました。
ミスと好プレーは、いつも紙一重です。 私たちは往々にして「ミス」の場面だけを切り取り、選手を評価してしまいがちですが、90分全体を見て、そこから何を学べるかを考えることも、サッカーの楽しみ方のひとつではないでしょうか。
モハメド・サラーの“人間らしさ”
この試合で一つ興味深かったのは、モハメド・サラーのコンディションでした。 アフリカネイションズカップから戻ったばかりのエジプトの英雄は、フル出場したものの、全盛期のキレには遠い出来。 特に右足でのシュートでは、らしくないミスも目立ちました。
「He’s not a machine, he’s a man.」
「彼はマシンじゃない。ひとりの人間だ。」
サラーのようなワールドクラスの選手でさえ、常に100%ではいられません。 だからこそ、コンディションの波に耐えながらプレーし続けることも、プロ選手の“強さ”なのだと思わされます。
そして同時に、「今日のサラーなら、もっと仕留められたかもしれない」という視点も生まれます。 強豪相手にも、必ず「チャンスの窓」がわずかに開く時間がある。 そこを突けるかどうかが、クラブとしての「次のステップ」なのかもしれません。
0-3の中にあった「希望」と「宿題」
スコアボードには0-3。 リバプールは、ドミニク・ソボスライ、ジェレミー・フリンポング、そして最後はコディ・ガクポのゴールで、しっかりとした強者の勝ち方を見せました。
アーネ・スロット監督は、2022年にフェイエノールトを率いてヴェロドロームを攻略したときと同じように、この夜も「狙いどおり」の結果を手にした形です。
一方のオリンピック・マルセイユは、一部のサポーターからブーイングを浴びつつも、まだチャンピオンズリーグのプレーオフ進出を諦める状況ではありません。 次の舞台は、アウェーのクラブ・ブルージュ戦。 そこでの結果次第で、夢は続くかもしれません。
この試合で見えたものを、いくつか整理してみます。
・グリーンウッドは、苦しい中でもチームを前に進めようとした。
・グイリは、CL初先発として十分に戦えることを示した。
・ルリは、不運なオウンゴールがありながらも、何度もチームを救った。
・パヴァールは、危険な場面で冷静にカバーし続けた。
・そしてチーム全体は、「リバプールを本気にさせた時間帯」を確かに作り出した。
一方で、こうした「良さ」を90分間維持すること。 決定的チャンスを決め切る冷静さ。 試合の流れがこちらに傾きかけたときに、一気にスコアを動かせる“したたかさ”。
これらは、今のマルセイユがこれから積み重ねていかなければならない「宿題」のように見えます。
あなたなら、この0-3をどう受け止めるか
サッカーを観るとき、結果だけを見て「ダメだった」と切り捨てるのは、とても簡単です。 けれど、子どもたちと一緒にこの試合を振り返るなら、こんな問いかけもできるかもしれません。
「どのプレーが一番心に残った?」
「もし自分がグリーンウッドだったら、あのときどうする?」
「ルリのオウンゴールを見て、何を感じた?」
「強い相手に負けたとき、次に向けて何ができると思う?」
サッカーは、勝った負けただけでは終わらないスポーツです。 リバプールのようなチームとの対戦は、クラブにとってもサポーターにとっても、「今、自分たちがどこにいるのか」を知る鏡でもあります。
0-3という鏡に映った自分を、ただ嘆くのか。
それとも、「ここから何を変えられるか」と問い直すのか。
ヴェロドロームの熱、サポーターの声、そしてピッチ上の選手たちの表情を思い出しながら、一人ひとりが自分なりの答えを探していくこと。 それもまた、サッカーを「学ぶ」ということなのかもしれません。
夢を見続けるために
リバプールは、この勝利でトップ8進出へ大きく前進しました。 次のアンフィールドでのカラバフ戦に勝てば、自力で道を切り拓けます。
一方のオリンピック・マルセイユは、ブルージュとの決戦にすべてが懸かっています。 ここで勝てるかどうかで、このシーズンの物語は、大きく違った意味を持つでしょう。
最後に、この試合の夜にふさわしい言葉で締めくくりたいと思います。
「Le succès, c’est d’aller d’échec en échec sans perdre son enthousiasme.」
「成功とは、失敗から失敗へと進みながらも、その情熱を失わないことだ。」
0-3の夜を、次の一歩への“始まり”にできるかどうか。 それは、まだ終わっていない今後の試合が教えてくれます。
- ソボスライの「壁の下を通すFK」に込められた判断力を解説する — 強く打つだけが正解ではなく、壁がジャンプする一瞬を読んで地を這うシュートを選ぶ。「最適な解決策を見つける力」がトップ選手の強さであることを伝える
- グリーンウッドの「ゴールを決めなくてもチームを引っ張れる」姿勢に注目する — 苦しい0-3の状況で連続シュートを打ち続けた姿は、エースの役割がゴールだけでないことを教えてくれる
- サラーが全盛期のキレでなくてもフル出場した試合を「プロの強さ」として見る — アフリカネイションズカップ直後のコンディション不良の中でプレーし続けることも、プロ選手の現実の一部である
