ブルエナジー・スタジアムが示す「もうひとつの家」としてのスタジアムの未来
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ウディネーゼの「家」、ブルエナジー・スタジアムが教えてくれること

イタリア北東部フリウリのクラブ、ウディネーゼ・カルチョ。 そのホームスタジアムである「ブルエナジー・スタジアム」が、10周年という節目を迎えました。
2016年1月17日のこけら落としから、今日まで。 このスタジアムは、単なる「試合会場」から、「街とクラブの未来を映す場所」へと、静かに姿を変えてきました。
あなたにとって「スタジアム」とは、どんな場所でしょうか。 選手を応援する場所。 家族や友だちと盛り上がる場所。 あるいは、特別な思い出がつまった「もうひとつの家」でしょうか。
10年で築かれた「もうひとつの家」
ブルエナジー・スタジアムが公式戦で扉を開いたのは、2016年1月。 最初の試合は、セリエAでのユヴェントス戦でした。 あのときから今日まで、ウディネーゼはここでセリエAとコッパ・イタリアを合わせて208試合を戦っています。
1試合あたりの平均観客数は、20,567人。 地方クラブでありながら、2万人を超える観客が「日常」となっていることは、クラブにとっても街にとっても大きな財産です。
最多入場者数の記録は、2017年1月29日。 ミランを迎えた一戦には、26,008人の観客が詰めかけました。 この日の勝利は、今も多くのウディネーゼ・サポーターの心の中に焼き付いているはずです。
きっとスタンドには、学校終わりの子どもたちもいれば、長年クラブを見守ってきたお年寄りもいたことでしょう。 違う世代が同じゴールに歓声を上げる。 それこそが、スタジアムという場所の、何よりの魅力なのかもしれません。
「新しいスタジアム」がクラブにもたらしたもの
ブルエナジー・スタジアムがもたらした変化は、雰囲気や快適さだけではありません。 クラブの経営面にも、大きなインパクトを与えました。
旧スタジアムを使っていた2012/13シーズン、ウディネーゼのスタジアム収入は約400万ユーロでした。 それが、新スタジアム稼働後の2024/25シーズンには、9.4百万(940万)ユーロへ。 なんと137%増という伸びです。
スタジアムが完成した最初のシーズンから、すでに収入は約60%増の640万ユーロに達していました。 「観客が来たくなる場所」を作ることが、そのままクラブの持続的な力につながる。 これは、どのリーグの、どのクラブにも通じる、ひとつの答えといえるかもしれません。
あなたの応援するクラブのスタジアムはどうでしょうか。 試合以外の日にも足を運びたくなるような場所になっているでしょうか。
| 指標 | 旧スタジアム期 | 新スタジアム期 | 評価 |
|---|---|---|---|
| スタジアム収入 | 約400万ユーロ(2012/13) | 940万ユーロ(2024/25) | ◎ 137%増 |
| 平均観客数 | 不明(地方規模) | 20,567人 | ○ 安定集客 |
| 最多入場記録 | — | 26,008人(2017/1/29 ミラン戦) | ◎ 好調時集客 |
| 公式戦開催数 | — | 208試合(セリエA+コッパ) | ○ 継続稼働 |
| 環境対応 | △ 未対応 | ◎ ソーラーパーク・スモークフリー | ◎ 業界先進 |
| 大型国際大会 | △ 未誘致 | ◎ UEFA スーパーカップ等 | ◎ 誘致実績あり |
ホスピタリティと「クラブハウス文化」の広がり
ブルエナジー・スタジアムの特徴のひとつが、ホスピタリティの充実です。
ウディネーゼは、スタジアム内に「Udinese Club House(ウディネーゼ・クラブハウス)」を整備しました。 ここは、ヨーロッパでも最先端のホスピタリティサービスのひとつと評価される空間です。
VIPだけでなく、さまざまな層のサポーターに向けた快適な観戦環境、食事や交流の場を提供し、「試合を見る」以上の体験をつくり出すこと。 その積み重ねが、リピーターを増やし、クラブへの愛着を深めていきます。
かつてのスタジアムは「90分のためだけに行く場所」でした。 今は、「一日を過ごせる空間」へと変わりつつあります。
日本のスタジアムにも、こうしたクラブハウス文化やホスピタリティの考え方が、これからもっと広がっていくのかもしれません。 あなたなら、どんなサービスがあれば、もっとスタジアムに行きたくなるでしょうか。
イタリアで最も「グリーン」なスタジアムへ
ブルエナジー・スタジアムが、特に大切にしているテーマがあります。 それが「サステナビリティ(持続可能性)」です。
スタジアムの屋根には、イタリアのスタジアムとしては初めての「太陽光パネルのパーク(ソーラーパーク)」が設置されました。 ここから生まれたのが、イタリアサッカー界で初の「再生可能エネルギー共同体(Comunità Energetica Rinnovabile)」です。
「Comunità Energetica Rinnovabile」 「再生可能エネルギーでつながるコミュニティ」
クラブ、ファン、地域が一体となって、エネルギーを「作り、分かち合う」試みです。
さらに、スタジアム内のホスピタリティエリアではプラスチック製品を排除。 喫煙可能エリアを制限し、スモークフリーゾーンを導入。 スタジアム内のあちこちに分別回収のポイントを設置することで、リサイクルを促しています。
こうした取り組みによって、ブルエナジー・スタジアムは「イタリアで最もグリーンなスタジアム」とも評されるようになりました。
「サッカー」と「環境配慮」。 一見、遠く感じるかもしれませんが、実はとても近いテーマです。
あなたがスタジアムで飲み物を飲むとき、その容器がどう扱われているか。 応援の楽しさと同じくらい、そんな小さな意識も、これからのフットボールには大切になっていくのかもしれません。
- 試合観戦体験の質が選手の成長意欲に直結する — 快適なスタジアムで日常的に試合を観た子どもは、プロレベルのサッカーをより身近に感じ、目標設定が具体化しやすくなる
- ホスピタリティ空間での保護者コミュニケーションを活用する — クラブハウスのような交流スペースがあると保護者どうしのつながりが生まれ、チームへの愛着と継続参加率が高まる
- 環境教育とサッカーを結びつけた活動を提案する — ブルエナジー・スタジアムのように、分別回収・再生エネルギーの取り組みを子どもたちが体験できる仕掛けは、社会性育成の場としても有効
ウディネーゼのスタジアムが見てきた大舞台
この10年間、ブルエナジー・スタジアムは、ウディネーゼのホームゲームだけでなく、数々のビッグマッチの舞台にもなってきました。
プレシーズンには、ウェストハム、アスレティック・ビルバオ、チェルシーといった強豪クラブとの親善試合が行われています。 海外クラブとの対戦は、地域のファンにとって、世界のサッカーを身近に感じられる貴重な機会です。
イタリア代表の試合も、これまでに5度開催されました。 ラグビーのイタリア代表も2度プレーしており、2026年には再びこのスタジアムに戻ってくる予定です。
2019年には、U-21欧州選手権の会場にも選ばれ、4試合を開催。 その中には、「スペイン対ドイツ」という、未来のスターたちが顔を揃えた決勝戦も含まれていました。
そして2025年夏。 ブルエナジー・スタジアムは、フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の歴史の中で、最も大きなスポーツイベントを迎えます。 UEFAスーパーカップ。
ヨーロッパの頂点を争うこの一戦で、パリ・サン=ジェルマン(PSG)がトッテナムを破り、タイトルを手にしました。
「the most important sporting event ever organized in Friuli-Venezia Giulia」 「フリウリ=ヴェネツィア・ジュリアでこれまで開催された中で、最も重要なスポーツイベント」
地方都市ウディネのスタジアムが、ヨーロッパ中の視線を集める夜を迎えたこと。 それは、クラブだけでなく、街にとっても大きな誇りとなったはずです。
スポーツだけではない、「街のアリーナ」へ

ブルエナジー・スタジアムは、スポーツだけのための施設ではありません。 2024年からは、コンサートの会場としても再び活用されるようになりました。
ズッケロやネグラマーロといったアーティストがすでにステージに立ち、これからはヴァスコ・ロッシ、エロス・ラマッツォッティ、再びズッケロなど、多くのイタリア音楽界の大物がこのピッチに足を踏み入れます。
サッカーのゴールが決まる場所で、今度は音楽のクライマックスが生まれる。
「スタジアム=サッカーだけの場所」という固定観念から、「街のアリーナ」「多目的な文化の中心」へ。 この変化は、世界中のスタジアムが直面している新しい役割のひとつです。
あなたが暮らす街のスタジアムは、サッカー以外のどんなイベントに使われているでしょうか。 スタジアムが、地域の文化や音楽、子どもたちの体験学習の場にもなっていくとしたら、そこにはどんな未来が広がるでしょうか。
- スタジアム収入がチームの補強力に直結する — 観客が増え収入が上がるほどクラブはより良い選手を呼べる。スタジアムに足を運ぶことは、自分が好きなクラブを育てる行動でもある
- コンサートやイベントもスタジアムの大切な役割 — ブルエナジー・スタジアムではズッケロやネグラマーロのコンサートも開催。サッカー以外の文化イベントで地域とクラブがつながる時代になっている
- 環境への意識を持ってスタジアムを楽しむ — ドリンクの容器がリサイクルされているか、喫煙エリアが分離されているかなど、スタジアムの環境配慮に目を向けることも現代のサポーターとしての姿勢
「インテル戦の夜」に重なる10年の歩み
10周年を迎えるこの日に、ブルエナジー・スタジアムは、首位インテルを迎えます。
インテルというビッグクラブと、ホーム・ウディネーゼ。 ピッチ上では、勝ち点3をめぐる真剣勝負が繰り広げられます。
けれど、スタンドに目を向けてみると、もうひとつのドラマがあります。
10年前、まだ小さかった子どもが、今では自分の声でチャントを歌っているかもしれません。 当時スタジアムの完成を見届けたファンが、今日も同じ席でチームを見守っているかもしれません。
クラブと共に歩んできた10年。 そこに重なる、一人ひとりのサポーターの10年。
スタジアムとは、そうした時間の重なりが、静かに積み上がっていく場所なのだと、あらためて感じさせられます。
あなたにとっての「理想のスタジアム」とは
ブルエナジー・スタジアムの10年の歩みから、見えてくるものがあります。
快適で、通いたくなること。 環境に配慮していること。 スポーツだけでなく、街の文化を育む場所であること。 そして、クラブの経営を支える大切な柱であること。
日本でも、世界でも、新しいスタジアム建設や改修の話題は増えています。 そのとき、私たちはどんな視点でスタジアムを見つめるべきでしょうか。
自分が応援するクラブのホームスタジアムが、10年後、20年後にどんな姿であってほしいのか。 そこには、どんな雰囲気があって、どんな人たちが集まっているのか。
ブルエナジー・スタジアムの歴史をたどることは、「スタジアムとは何か」「クラブとは何か」を、もう一度静かに考えてみるきっかけになるのかもしれません。
スタジアムとサッカーの未来
最後に、スタジアムが持つ意味にも通じる、こんな言葉を紹介したいと思います。
「Football is nothing without fans.」 「フットボールは、ファンなしでは何ものでもない。」
この言葉どおり、ブルエナジー・スタジアムの10年を形作ってきたのは、ウディネーゼというクラブだけでなく、そこに集い続けた多くの人たちでした。
これからの10年、20年。 あなたは、どんなスタジアムで、どんなサッカーを見ていたいでしょうか。