セビージャ対アトレティコ・マドリー戦で降格圏から脱出したセビージャの選手が諦めない姿勢で闘う、ラ・リーガの残留争いを象徴する一戦のイメージ

セビージャが“降格圏一歩手前”から示した決断のサッカー――アダムスのPKとグデリの一歩が教える「諦めない」の本当の意味

DEFINITION
セビージャ 2-1 アトレティコが示したもの
2026シーズン、降格圏で苦しむセビージャがアトレティコ・マドリーを2-1で下し15位に浮上。アダムスのPKとグデリのヘッドを生んだのは、「安全な選択」に逃げず自分たちのスタンスを貫く決断の積み重ねだった。

なぜセビージャは、降格圏からの一歩を「アトレティコ戦」で踏み出せたのか

PKスポットに立つアコル・アダムスの「10秒間」

前半まだ立ち上がり、6分。

アトレティコ・マドリーのディフェンスが、セビージャのイサック・ロメロをペナルティエリア内で倒した。

スタジアム全体が一瞬ざわめき、すぐに歓声に変わる。

PK。

ボールを手に取ったのはアコル・アダムス。

目の前には、ビッグクラブ・アトレティコのゴール、そして守護神フアン・ムッソ。

セビージャは今シーズン、降格圏に沈み続け、3月28日にルイス・ガルシア・プラサが新監督として就任したばかり。

クラブのモットーは「彼らは決して諦めない」と言われるが、勝てない日々が続けば、その言葉もどこか遠く感じる時間があったはずだ。

それでも、この瞬間だけは、アダムスひとりの決断と技術に委ねられている。

助走の歩幅、蹴るコース、強さ。

「決めなければいけない」プレッシャーと、「自分は何を選ぶのか」のあいだで、10秒にも満たない時間の中で彼はひとつの答えを選び、ゴール左へ蹴り込んだ。

10分、1-0。

彼の選択は、結果として「正解」になった。

けれど、ここで大事なのは、入ったか外れたかよりも、その前にどんな迷いや計算があったのか、ということかもしれない。

COMPARISON / 1-1になった後の3つの選択肢と、セビージャの答え
観点 安全志向の選択 セビージャが取った選択 評価
失点直後の姿勢 ショックを引きずり守備的に撤退 前向きなランニングを継続 ◎ 継承
勝ち点の狙い 勝ち点1で割り切りリスク最小化 勝ち点3狙いでアグレッシブ ○ 攻めの選択
前半ATのクロス 迷ってショートに逃がす バルガスが迷わずピンポイントへ
ゴール前の飛び込み 半歩ためらい様子見 グデリが全身で突入しヘディング
試合後の振り返り軸 結果の○×だけで判定 選んだ理由と次への工夫を問う △ 本文が提案する姿勢
◎=セビージャが実際に選んだ行動/○=評価分かれる判断/△=記事が読者に促す姿勢

「大きくローテーションしたアトレティコ」と向き合う難しさ

この日のアトレティコは、チャンピオンズリーグでバルセロナに勝利した直後の試合だった。

3位浮上のチャンスもあったが、ディエゴ・シメオネはメンバーを大きく入れ替え、Javier Boñar(ボニャール)などBチームの選手を起用して臨んだ。

ふだん出ていない選手がチャンスをもらう試合は、一見すると「相手が弱い」と考えたくなる。

だが、実際にピッチで対峙する側からすると、むしろ厄介な相手でもある。

なぜか。

  • 映像やデータが少なく、個々の特徴をつかみきれない
  • 「このチャンスでアピールしたい」と、強いエネルギーで向かってくる
  • チームとしても、いつもと違う形で予測がしづらい

実際、アトレティコB所属のボニャールは、この日トップチーム初先発でプロ初ゴールを決めている。

1-0でリードしながら、35分に同点に追いつかれたセビージャ。

「降格圏から抜け出したい」チームにとって、リードを守り切れなかった現実は重い。

スタンドには、今季何度も味わってきた、あの嫌な感覚がよぎったかもしれない。

ここで問われたのは、戦術よりもむしろ、心と頭の使い方だったのではないか。

FOR COACHES / FOR COACHES 指導者が持ち帰る3つの問い
「諦めない」を具体の動作に翻訳する
  1. スタンスを言語化する — 「今日は勝ち点3狙い」か「勝ち点1でいい」かを試合前にチームで決め、失点後も全員で共有する
  2. 結果より「決める前の一歩」を評価する — クロスの供給者・飛び込む選手の「信じ切った一歩」を振り返り映像でピックアップする
  3. うまくいかなかった場合までセットで選ぶ — 「この選択で外した時、どう受け止めるか」を練習時点で選手に問いかけ、選択を本人に引き受けさせる
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「諦めない」とは、何を諦めないことなのか

セビージャのモットーは、「彼らは決して諦めない」と言われる。

だが、実際にピッチに立つ選手たちは、「何を」諦めないのかを、ひとりひとりで選び続ける必要がある。

1-1になったあと、彼らにはいくつかの選択肢があったはずだ。

  • 失点のショックを引きずり、守備的になってしまう
  • 「勝ち点1でいい」と割り切り、リスクを抑えたゲームに切り替える
  • あくまで勝ち点3を目指し、アグレッシブに戦い続ける

順位表を見れば、勝ち点1も決して無駄ではない。

しかし、その「安全な選択」は時に、チームが抱える迷いや不安を、より強くしてしまうこともある。

新監督ルイス・ガルシア・プラサが、どのようなメッセージを送り続けていたのか。

細かい言葉まではわからなくても、選手のプレーからは「引かない」という意志がにじんでいた。

ミスを恐れてボールを下げるのか。

あるいは、リスクを引き受けて、前に運ぶのか。

「諦めない」とは、スコアをひっくり返すことだけではなく、自分たちが試合前に決めたスタンスを、たとえ状況が悪くなっても手放さないことなのかもしれない。

FOR PLAYERS & PARENTS / FOR PLAYERS & PARENTS 試合の見え方を変える3視点
ゴールの「一歩手前の時間」に目を向ける
  1. PKスポットの10秒を想像する — 助走・コース・強さを蹴る前に決め、自分なら何を選ぶかをイメージしておく
  2. 失点後の立ち振る舞いを観察する — チームがリスクを取り続けるか下がるかで、監督の狙いと選手の覚悟が見える
  3. 結果の○×を急がない — 子どものプレーも「なぜそう選んだか」を親子で話すと、次の試合の準備が変わる

前半アディショナルタイム、グデリの一歩

前半終了が近づいた45+2分。

右サイドからのクロスに、ネマニャ・グデリが勢いよく飛び込む。

クロスを供給したのはルベン・バルガス。

ボールはまさに「ここに入れてほしい」というポイントに届き、グデリは全身をぶつけるようにヘディングで叩き込んだ。

2-1。

シンプルなクロスとヘディングに見えるが、その裏側にもいくつもの選択と判断がある。

  • バルガスは、マイナスに折り返すのか、ニアを狙うのか、ファーを見つけるのかを、ほんの一瞬で選んでいる
  • グデリは、あえてペナルティエリア外で構えるのか、それともゴール前へ飛び込むのかを、事前に決めて走り出している
  • どちらも、「ここに出る」「ここに走る」と決めたあと、最後までその選択を信じきっている

たとえば、バルガスが最後の瞬間に迷って、クロスをやめてしまったら。

たとえば、グデリが「行くか、行かないか」で半歩ためらっていたら。

あのゴールは生まれていただろうか。

ゴールの前には、必ず「決める前の一歩」がある。

その一歩を踏み出すかどうかは、技術だけではなく、自分の選択を信じる心にもかかっている。

「勝点3以上の価値」がある試合とは

この勝利で、セビージャは15位に浮上し、マジョルカに3ポイント差をつけて降格圏から離れた。

しかも、この1試合で得た勝点は、直近5試合の合計よりも多い。

数字だけを見れば、「大きな勝ち点3」と表現されるだろう。

だが、もっと大事なのは、「この試合を通して、何を学び、何を確かめられたのか」かもしれない。

苦しいシーズンを送っているチームにとって、結果が出ない時間の中で揺れ動くのは、戦術だけではない。

  • 自分たちは本当にやれるのかという自信
  • 監督やチームメイトへの信頼
  • 「このスタイルでいいのか」という迷い

アトレティコのような強豪を相手に、自分たちが選んだ前向きな姿勢を貫き、PKを決め、追いつかれても突き放す。

そうした一連の流れの中で、「この方向で戦っていける」という感覚を、選手やスタッフが少しでも手にできたなら、この試合の価値は勝点3にとどまらないだろう。

日本の現場に置き換えると、何が見えてくるか

この試合のストーリーを、日本のサッカーに重ねてみると、いくつかの問いが浮かんでくる。

たとえば、「降格争い」ではなく、「残り数節で上位進出の可能性がわずかに残っているチーム」や、「都大会出場をかけた最後の予選」など、日本の高校やクラブユースでもよくある状況を想像してみる。

もし、自分がそこにいる選手なら、どんな選択をするだろうか。

  • 早い時間帯にPKをもらったとき、自分からボールを持つか、誰かに任せるか
  • 格上相手に先制したあと、無意識に守りに入ってしまわないか
  • 同点に追いつかれた瞬間、「負けなければいい」に考えを切り替えてしまわないか

また、指導者の立場で見れば、こうした場面でどんなメッセージを送り、どんな交代やシステム変更を選ぶのか。

リスクを取る判断を選手に任せるのか、自分が決めるのか。

そこにも、それぞれの「サッカー観」が現れる。

日本では、「安全な選択」「ミスをしない選択」が評価されることが多いように感じる人もいるかもしれない。

一方で、セビージャがこの試合で見せたような、「今は勝ち点3を取りにいく」という姿勢を貫くには、責任と覚悟が必要になる。

どちらが正しい、という話ではない。

大事なのは、「なぜ、いま、この選択をするのか」を、自分の言葉で説明できるかどうかだろう。

「うまくいかなかったらどうするか」まで考えておく

セビージャはこの試合で勝ったからこそ、「諦めない姿勢」が讃えられている。

では、もしボニャールのゴールで1-1のまま試合が終わっていたら。

もし、後半で逆転されて1-2で敗れていたら。

同じように、「諦めなかった」と言えただろうか。

サッカーには、どうしてもコントロールできない要素がある。

PKがポストに当たるか、キーパーに触られるか。

クロスのわずかなブレで、ヘディングの軌道が変わるか。

それでも、「自分たちはこう戦う」と決めて選んだ道は、結果に関係なく、次への材料になる。

大事なのは、「うまくいかない可能性」まで含めて、その選択を引き受けているかどうか。

もしうまくいかなかったとき、自分はどう受け止めるのか。

  • 選択そのものを否定して、「あのとき守っておけばよかった」と後悔するのか
  • 選んだ理由を振り返り、「次はどう工夫するか」を考えるのか

試合中の判断は一瞬だが、その後の振り返りは時間をかけて行うことができる。

この「答えを急がない姿勢」が、選手やチームの成長を支えていくのではないだろうか。

FAQ / よくある質問
Q. セビージャ対アトレティコのスコアと得点者は?
A. セビージャが2-1で勝利しました。10分前後にアコル・アダムスがPKで先制、35分にアトレティコBのボニャールが初ゴールで同点に追いつきましたが、前半アディショナルタイムの45+2分にバルガスのクロスからネマニャ・グデリがヘディングで勝ち越しました。
Q. なぜこの勝利が「勝点3以上」と言われるのか?
A. 15位に浮上し降格圏のマジョルカに3ポイント差をつけただけでなく、この1試合で得た勝点が直近5試合の合計を上回るためです。さらに、苦しい時期に自分たちの前向きなスタイルで強豪を下せた事実が、チームの自信と戦い方への確信を取り戻す材料になりました。
Q. アトレティコがBチームの選手を起用したのに苦戦したのはなぜ?
A. CLバルセロナ戦直後で大幅ローテーションし、ボニャールなどトップ初先発の選手を起用しました。しかし「普段出ない選手」は映像・データが少なく特徴をつかみづらく、アピール欲で強いエネルギーをぶつけてくるため、むしろ対戦相手からは予測しづらい厄介な存在になります。
Q. 育成現場で「諦めない」をどう指導に落とし込めばいい?
A. スコアをひっくり返すことだけが「諦めない」ではなく、試合前に決めたスタンスを状況が悪化しても手放さないことだと捉え直します。選手には「なぜいまこの選択をするか」を自分の言葉で説明させ、失敗した場合まで含めて選択を引き受ける姿勢を評価対象にします。

「自分ならどうする?」と問いかけてみる

セビージャ対アトレティコの2-1というスコアだけを見れば、「セビージャが貴重な勝利を挙げ、降格圏を脱した」とまとめることができる。

しかし、その裏側では、PKスポットに立つアダムスの10秒、同点に追いつかれたあとも前へ出るかどうかの迷い、グデリが半歩も引かずに飛び込んだ瞬間など、いくつもの小さな選択の積み重ねがあった。

試合を見ているとき、自分が選手なら、監督なら、保護者なら、どんなことを考えるだろう。

  • 「ここでリスクを取っていいのか」
  • 「この選手に任せていいのか」
  • 「結果が出なかったとき、どう支えるのか」

画面の向こうの出来事として眺めるのではなく、自分の中に同じ問いを持ってみると、1試合の見え方は少し変わってくる。

正解は、きっとひとつではない。

それでも、「自分ならこう考える」と立ち止まる時間を持てたとき、サッカーはただの勝ち負けを超えて、もう少し深いところで、自分の選び方を映してくれる。

ピッチの上で決断を重ねる彼らの姿に、自分自身の選び方を重ねながら、次の試合を見てみるのもいいかもしれない。

ゴールが決まる瞬間だけでなく、その少し前の「一歩手前の時間」に目を向けてみると、サッカーはまた違う顔を見せてくれる。

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