ユヴェントスの「アイスマン」ジョナサン・デイビッド──批判の中で育まれるディーゼル型ストライカーの時間
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ユヴェントスの「アイスマン」ジョナサン・デイビッド──批判の中でこそ見える、本当のストライカー像

2025-26シーズン、ユヴェントスの新たなセンターフォワードとして大きな期待を背負ってやってきたジョナサン・デイビッド。 しかし、ここまでの道のりは決して順風満帆とは言えません。 セリエAでの得点はわずか1。さらに強烈な批判の象徴となってしまったのが、レッチェ戦でのPK失敗でした。
イタリア紙は辛辣な言葉で彼を描写しています。
「Qui sait comment Jonathan David a gagné son surnom ? Car de l’Iceman censé transformer les rêves de la Juventus en réalité, il ne reste qu’une flaque d’eau créée par un mélange d’anxiété, de peur et d’arrogance.」 「ジョナサン・デイビッドがどうやってあのあだ名を手に入れたのか、誰か知っているか? ユヴェントスの夢を現実に変えるはずだった“アイスマン”から残っているのは、不安と恐怖と傲慢さが混ざり合ってできた、ひとつの水たまりだけだ。」
皮肉たっぷりのこの比喩は、多くのファンの気持ちを代弁しているようにも聞こえます。 一方で、本当にそう言い切ってしまってよいのでしょうか。 ここからは、LOSCリール時代を振り返りながら、ジョナサン・デイビッドというストライカーの「時間のかかる成長」を一緒にたどってみましょう。
レッチェ戦のPK失敗──「一度のミス」で決めつけていいのか
1月3日、ユヴェントス対レッチェ戦。 スコアは1-1のまま迎えた66分。 PKのチャンスでボールを手にしたのは、背番号30、ジョナサン・デイビッドでした。
中途半端なパネンカとも、弱いインサイドキックとも言える微妙なキックは、レッチェ守護神フラコンの正面。 簡単にセーブされてしまい、スタジアムには重い空気が流れます。
しかし、このワンシーンだけで彼を断罪してしまうのは、あまりにも短絡的かもしれません。 リール時代、彼はPKの名手でした。 LOSCで26本のPKを決め、レアル・マドリード戦やアトレティコ・マドリード戦、そして白熱のダービー・ドゥ・ノール(対RCランス)など、大舞台で結果を出してきた選手です。
PKを一度外した瞬間、選手を「メンタルが弱い」「ビッグクラブにふさわしくない」と決めつけてしまう。 これは、サッカーを観る私たちが、つい陥りがちな「早すぎる結論」なのかもしれません。
あなたが監督なら、この一度の失敗で、PKキッカーから彼を外すでしょうか。 それとも、もう一度チャンスを与えるでしょうか。
リールでも「スロースタート」だったデイビッド
実はジョナサン・デイビッドには、「最初は時間がかかる」というはっきりとした特徴があります。 それはリール時代にも、まったく同じように表れていました。
2020年夏、ヘントからリールへ。 当時のクラブ史上最高額、2600万ユーロの移籍金で加入したものの、前半戦でのゴールはわずか2つ。 しかも、そのシーズンの前半にはセルティック戦でPKも失敗していました。
それでも、周囲の評価は徐々に変わっていきます。 理由のひとつは、彼の「献身」と「我慢強さ」です。
元チームメイトのジェレミー・ピエは、当時を振り返ってこう語ります。
「Pour jouer le haut de tableau, il nous fallait une assise défensive très forte, et dès le début, le travail de Jonathan était monumental en empêchant le gardien ou la défense adverse de relancer proprement.」 「上位で戦うためには、まず強固な守備の土台が必要だった。 ジョナサンは加入当初から、相手GKやDFのビルドアップを封じる守備で、本当に巨大な仕事をしていたんだ。」
そして続けて、練習での姿勢についてこう語ります。
「Au lieu de s’énerver, il s’est mis à travailler deux fois plus. Tim’ Weah et moi, qui jouions moins, on l’accompagnait pendant une heure et demie après chaque entraînement… c’était fou !」 「イライラする代わりに、彼は練習量を2倍に増やした。 試合にあまり出ていなかったティム・ウェアと僕は、練習後に1時間半、彼に付き合ってクロスを上げ続けたんだ。 左足シュート、右足シュート、ヘディング、PK、連続した動き……全部やった。あれは本当にすごかった。」
そして、その積み重ねが、最終的には「リール歴代3位の得点者」という結果につながっていきます。 リールでの通算成績は232試合109得点。 「最初は困難、でもそこから一気に加速する」。 そんな「ディーゼル型」の成長曲線が、彼のキャリアにはくっきりと刻まれています。
ユヴェントスでのスロースタートも、もしかするとこの延長線上にあるのではないでしょうか。
サッスオーロ戦で見せた「反発力」──真価の片鱗
レッチェ戦のPK失敗からわずか3日後。 サッスオーロ戦(0-3)で、ジョナサン・デイビッドは見事な「応答」を示します。
まずは、背後へのパスを受けてポストプレーに入り、巧みなターンからファビオ・ミレッティへの絶妙なラストパス。 その数秒後には、自らも左足の冷静なシュートでゴールネットを揺らしました。
「失敗の直後に、どんなプレーを見せるか」。 ストライカーとしての真価は、ここに表れます。
大事なのは「PKを外したこと」そのものではなく、 「PKを外した後、次の試合でどんなメンタルでピッチに立てるか」。 このサッスオーロ戦は、そうした意味で、ユヴェントスでの一つのターニングポイントになるかもしれません。
あなたがもし彼の立場だったら、また次のPKを任されたとき、どういう気持ちでスポットに立つと思いますか。
「チルな男」が支えられるユヴェントスのロッカールーム

ジョナサン・デイビッドの強みは、プレーだけではありません。 その人間性もまた、彼を支える大きな武器です。
ジェレミー・ピエは、彼をこんなふうに表現しています。
「Jonathan, c’est un grand compétiteur, mais avant tout un garçon très chill : ce mec n’emmerde personne, ne s’énerve jamais et reste toujours très calme.」 「ジョナサンは大きな競争心を持った選手だけど、その前に“すごくチルな男”なんだ。 誰の邪魔もしないし、怒鳴り散らしたりもしない。 いつだってとても落ち着いている。」
実際、サッスオーロ戦でゴールを決めた後、彼のもとへ駆け寄ったのは、スタメンだけでなくベンチメンバー、そしてルチアーノ・スパレッティ監督まで含めた多くの仲間たちでした。 首に腕を回し、何度も抱きしめる光景は、「チームから浮いている」「ロッカールームで孤立している」といった噂を打ち消すに十分なものでした。
スパレッティ監督もまた、彼の最大の後ろ盾の一人です。 独特のユーモア、ときにはパスタやパルミジャーノのたとえ話まで持ち出しながら、批判にさらされる教え子をかばい続けています。
レッチェ戦での失敗の直後に、3日後のサッスオーロ戦でも彼をスタメン起用したのは、数字ではなく「過程」を評価している監督の強い意思の表れと言えるでしょう。
もしあなたがチームメイトだったら、調子を落としているストライカーに、どんな言葉をかけてあげたいですか。
「2026年」というキーワード──ユヴェントスとカナダ代表の交差点
「2026年」はジョナサン・デイビッドにとって大きな意味を持つ年になりそうです。
まずクラブレベルでは、ユヴェントスがスクデット争いの中心に戻るために、彼のゴールが必要とされます。 遅れてエンジンがかかるタイプであることを考えれば、2025-26シーズンの後半から2026年にかけて、一気に得点を量産する可能性も十分あります。
そしてもう一つ忘れてはならないのが、代表チーム。 カナダ代表として73試合37得点。 国の歴代最多得点記録を更新し続けるエースは、2026年ワールドカップで、自国開催という特別な大会を迎えます。
対戦相手はスイス、カタール、そしてプレーオフ勝者。 決して「死の組」ではなく、グループ突破を現実的に狙える組み合わせです。 この舞台で輝くためにも、ユヴェントスでの数年間が、彼にとっては「助走」になるはずです。
クラブと代表。 白と黒のストライプと、赤いユニフォーム。 その両方で結果を求められる中、「ディーゼル型ストライカー」が2026年にどんな姿でピッチに立っているのか。 いまの苦しみを知っているからこそ、その未来を想像すると、少し楽しみになってきませんか。
私たちは、選手にどれくらい「時間」をあげられるだろう
ユヴェントスのティフォージは、ゴールを待っています。 メディアは、すぐに結論を求めます。 数字は、容赦なく比較されます。
けれど、その一方で、リールで時間をかけて成長し、批判に耐え、黙々とトレーニングを続けてきたジョナサン・デイビッドという一人の人間がいます。
華々しいデビューを飾る選手もいれば、ゆっくりと、自分のペースで咲いていく選手もいる。 サッカーは、そのどちらの物語も受け入れるスポーツです。
あなたは、応援するクラブの新加入選手に、どれくらい「時間」をあげたいと思いますか。 1か月でしょうか。 半年でしょうか。 それとも、2シーズン、3シーズンというスパンで見守る覚悟があるでしょうか。
ジョナサン・デイビッドの物語は、「結果を急ぐサッカー界」に対して、私たちがもう一度「待つこと」の意味を考えるきっかけを投げかけているのかもしれません。
最後に、ストライカーをめぐる物語にふさわしい一言を添えたいと思います。
「Success is the sum of small efforts, repeated day in and day out.」 「成功とは、小さな努力を、日々繰り返していくことの積み重ねである。」
PKを外した夜も。 誰も見ていない練習後の1時間半も。 そのすべてが、いつかゴール前での一瞬の冷静さとして実を結ぶ。 2026年、ジョナサン・デイビッドがどんなストライカーになっているのか。 その答えを、少し長い目で一緒に見届けていきたいものです。
| 観点 | リール加入初期(2020年) | ユヴェントス加入初期(2025-26) | 評価 |
|---|---|---|---|
| 加入時の注目度 | クラブ史上最高額2600万ユーロ | フリートランスファーで期待大 | ○ ともに高い期待値 |
| 前半戦ゴール数 | 2得点 | セリエA 1得点 | △ スロースタート |
| PK失敗 | セルティック戦で失敗 | レッチェ戦で失敗(パネンカ崩れ) | △ 同パターンの繰り返し |
| 批判の内容 | 移籍金に見合わないと評される | 「水たまりだけが残る」と酷評 | △ 厳しい外部評価 |
| 逆境後の反応 | その後加速して通算109得点 | 3日後のサッスオーロ戦でゴール | ◎ 反発力が本質 |
| 監督の対応 | 継続起用で信頼を示す | スパレッティが3日後も先発起用 | ◎ 監督の長期的視点 |
- 一度のミスで評価を固定しない — PK失敗3日後もスタメン起用したスパレッティのように、ミス直後にチャンスを与え続けることで「反発力」を引き出す。外すのは根拠のある判断のときだけにする。
- ゴール以外の貢献を言語化して本人に伝える — デイビッドがリール加入初期に「守備でのビルドアップ妨害で巨大な仕事をしていた」と評されたように、スコアに現れない献身を具体的な言葉で選手本人に届ける。
- 練習後の自主トレを文化にする — ジェレミー・ピエがデイビッドに1時間半付き合い左足・右足・ヘディング・PKをすべてこなしたエピソードのように、「練習後に一緒に残る」雰囲気をチームに作る。
- ミスの翌試合こそ声援を大きく送る — デイビッドがPK失敗の3日後に得点したように、失敗の直後の試合が本当の評価を決める。子どもがミスをした後の次の試合こそ、最大の応援をする機会にする。
- プロでも「最初は時間がかかる」選手がいることを知る — リールで2600万ユーロの期待を背負いながら前半2得点だった事実は、「すぐ結果が出なくても続けることが大事」というメッセージとして子どもに伝えられる。
- チームメートへの落ち着きがロッカールームを変えることを学ぶ — 「誰の邪魔もしない、怒鳴らない、いつでも落ち着いている」デイビッドの姿勢は、試合に出ていないときでもチームに貢献できることを示している。
