ノリッジの育成責任者からヨーロッパのベンチへ ジョー・シュルバーグがラピッド・ウィーンで示す「学び続けるキャリア」とつながりの力
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ノリッジからラピッド・ウィーンへ。ジョー・シュルバーグの“学び続ける道”

イングランドのノリッジ・シティでアカデミーマネージャーを務めてきたジョー・シュルバーグが、オーストリアの名門クラブ、SKラピッド・ウィーン(Rapid Wien)にコーチとして加わることになりました。
新天地でタッグを組むのは、かつてノリッジの指揮を執ったヨハネス・ホフ・トールップ監督。 かつての上司と部下が、今度はウィーンの地で再びチーム作りに挑戦する形です。
アカデミーコーチから“ヨーロッパ挑戦”へ
ジョー・シュルバーグは、2017年7月にノリッジ・シティへ加入しました。 イングランド下部リーグのヨーヴィル・タウンの育成部門から移り、アカデミーでの仕事をスタートさせました。
最初はアカデミーコーチとして、U9からU16までの「フューチャーグループ」を担当しながら、フットボール・オペレーション・マネージャーとしても役割を担ってきました。
その後、彼は着実に階段を上がっていきます。 2022年8月にはアカデミーのヘッド・オブ・コーチングに就任し、2023年7月にはアカデミーマネージャーへ昇格しました。
2023-24シーズン以降は、ただの「育成の人」にはとどまりませんでした。 2024年9月には、ナルシス・ペラチがストーク・シティの監督に就任して退任した後、トップチームの暫定コーチングスタッフとしてヨハネス・ホフ・トールップのもとで8試合、ベンチに入っています。
その後もトールップ解任後のジャック・ウィルシャーの暫定政権を支えるなど、シュルバーグはアカデミーとトップチームを行き来しながら、ノリッジ・シティに貢献し続けました。
| 時期 | 役職 | 担当範囲 | 評価 |
|---|---|---|---|
| 2017年7月 | アカデミーコーチ加入 | U9〜U16フューチャーグループ + フットボール・オペレーション・マネージャー | ◎ 複数役割で着任 |
| 2022年8月 | ヘッド・オブ・コーチング | アカデミー全コーチング統括 | ○ 段階的昇格 |
| 2023年7月 | アカデミーマネージャー | アカデミー全体責任者 | ◎ トップ就任 |
| 2024年9月 | トップチーム暫定コーチ | ホフ・トールップ監督体制で8試合ベンチ入り | ◎ 育成から現場へ |
| 2026年 | ラピッド・ウィーン アシスタントコーチ | オーストリアブンデスリーガ | △ 国際舞台へ転換 |
ラピッド・ウィーンでの新たな役割
今回の移籍により、シュルバーグはオーストリア・ブンデスリーガの強豪、ラピッド・ウィーンでアシスタントコーチとして新たなチャレンジに挑みます。
クラブの発表によれば、シュルバーグはラピッド・ウィーンのコーチングスタッフに加わる「100年ぶりのイングランド人コーチ」になるという興味深い事実もあります。
かつて、1925-26シーズンにカーディフやサウサンプトンでプレーしたスタンリー・ウィルモットが、名将ディオニス・シェーネッカーの下でスタッフを務めていました。 その歴史が、約1世紀の時を経て再び動き出したことになります。
ラピッド・ウィーンは現在、オーストリア・ブンデスリーガで7位。 ヨーロッパの中堅クラブとして、タイトルと欧州カップ戦出場権の獲得を目指し、チーム作りの真っ最中です。
再び集結する“ノリッジ・ファミリー”
ヨハネス・ホフ・トールップにとって、ラピッド・ウィーンはノリッジ退任後初めての監督職です。
彼は新天地でのプロジェクトを進めるにあたり、信頼する顔ぶれを次々と呼び寄せています。 かつてノリッジやFCノアシェランで共に働いたアナリスト、アラン・アラックもその一人です。
トールップは会見でこう語っています。
「Alan was my chief analyst at Norwich, where I took him with me after we had worked together at FC Nordsjælland.」
「アランはノリッジでの私のチーフアナリストでした。FCノアシェランで一緒に働いた後、私は彼をノリッジに連れてきたのです。」
そして続けて、こんな言葉も残しています。
「He will always be a coach that will travel with me.」
「彼は、これからも私と共に旅をするコーチの一人であり続けるでしょう。」
この言葉には、「自分のフットボールを理解してくれる仲間と一緒に戦いたい」という監督としての強い意志がにじんでいます。
グレン・リッダースホルムはオーストリアには同行しませんでしたが、セルビア人コーチのルカ・パヴロヴィッチは残留し、そこにアラック、そしてシュルバーグが加わることで、トールップの新たな「スタッフチーム」が形になろうとしています。
- アカデミーとトップチームの両方を経験する機会を積極的につかむ — 育成だけ、トップだけでは見えない「橋渡し」の視点が生まれる。ノリッジでのトップチームベンチ入りがシュルバーグの価値を高め、ウィーン行きにつながった
- 信頼を積み上げる人間関係を日々の仕事で作る — 「また一緒にやろう」と声をかけられる関係は練習場での会話や試合後のやり取りの積み重ねから生まれる。この信頼がトールップからの招集を呼んだ
- 役職が変わっても「学び続ける姿勢」を保つ — ヨーヴィル・タウン、ノリッジ、ウィーンと環境を変えながら成長し続けるシュルバーグは、固定したポジションより姿勢がキャリアを動かすことを体現している
ノリッジ・シティに残された宿題
一方、ノリッジ・シティ側にとっては、アカデミーマネージャーの退任という大きな穴が生まれました。
現在、フットボール・ディベロップメント責任者であるディーン・ラスリックが、シュルバーグの職務を引き継ぐことが想定されています。 ラスリックは、トッテナムのアカデミーマネージャーを務めていた経験を持ち、2024年7月にノリッジに加入した人物です。
ノリッジのアカデミーは「カテゴリー1」の育成組織として評価されていますが、アカデミー・プロダクティビティ・ランキングでは2023/24、2024/25シーズンともに19位という結果にとどまっています。
育成からどれだけトップチームやプロの世界に選手を送り出しているか。 この「生産性」が問われる時代において、アカデミーの舵取り役が代わるというのは、クラブにとっても大きなターニングポイントと言えるでしょう。
ここで浮かんでくるのは、こんな問いかけです。
・アカデミー出身者がトップチームで輝くクラブと、そうでないクラブの違いはどこにあるのか。
・監督やコーチが移るたびに「育成の哲学」も変わってしまうのか。
・あるいは、クラブとしての「育成の一本筋」があれば、誰が来ても揺らがないのか。
「つながり」が生むキャリアの連鎖

シュルバーグのキャリアを見ていると、「人とのつながり」がいかに重要かをあらためて感じます。
ヨーヴィル・タウン、ノーサンプトン・タウン、アメリカ・オクラホマでのコーチ経験。 そしてノリッジでの7年以上にわたる活動。
その積み重ねの中で、多くの選手やコーチ、クラブスタッフと出会い、信頼を積み上げてきた結果が、今回のラピッド・ウィーン行きにつながっているとも言えます。
トールップはこうも語っています。
「There's probably also another coach joining from outside the club, we just have to finalise, hopefully, today.」
「おそらくクラブの外からもう一人コーチが加わることになるでしょう。あとは、きょう中にその最終決定をするだけです。」
この「もう一人」がジョー・シュルバーグでした。
かつて同じ船に乗った仲間同士が、再び新しい航海に出る。 その背景には、毎日の練習場での会話や、試合後のロッカールーム、長距離移動のバスや飛行機の中でのやり取りといった、目に見えない時間の積み重ねがあります。
読者のみなさんは、サッカーの世界で、あるいは学校や職場で、そうした「また一緒にやろう」と声をかけ合える仲間がどれくらいいるでしょうか。
育成とトップチーム、その“橋渡し役”の価値
シュルバーグのキャリアで興味深いのは、「アカデミー」と「トップチーム」の両方を経験している点です。
育成年代の指導は、勝敗よりも成長を重んじる世界。 一方、プロの世界は結果がすべてといっても過言ではない厳しさがあります。
その間を理解し、若い選手たちを“プロの要求レベル”へと橋渡しできる人材は、どのクラブにとっても非常に貴重です。
ノリッジ・シティは、シュルバーグに対して「クラブとして感謝し、新天地での成功を祈る」とメッセージを送っています。
アカデミーで育った選手がトップチームでデビューするとき。
あるいは、クラブを離れたコーチがヨーロッパの舞台で活躍を始めるとき。
そこには、目に見えにくい「育成の成果」が確かに存在しています。
私たちは、ゴールシーンやビッグクラブへの移籍だけでなく、こうした“育てる人”の移籍にも、もっと注目してみてもいいのかもしれません。
- コーチや監督にも「成長の物語」がある — シュルバーグはヨーヴィル・タウンからノリッジ、ウィーンへと移ってきた。選手だけでなくコーチたちも毎日学び続けている。その姿を知ると指導者への信頼と尊敬が自然に生まれる
- 「好きなことを続ける」と国境を越えるチャンスが来る — 7年以上の育成現場での積み重ねが、ラピッド・ウィーンという国際舞台へのチケットを手にした。今の努力は将来どこかで必ずつながる
- 監督やコーチ陣を「チーム」として見ると観戦が深くなる — ピッチの11人だけでなく、アナリスト・コーチ・マネージャーが一つのチームを動かしている。スタッフの名前を調べてみると、サッカー観戦がより立体的になる
ファンとして、何を見つめていくか
ラピッド・ウィーンのファンにとっては、「新しい監督ヨハネス・ホフ・トールップが、どんなサッカーを見せてくれるのか」。 その視線の中に、イングランドからやってきたジョー・シュルバーグという新たな存在も加わることになります。
ノリッジ・シティのファンにとっては、クラブを去る一人のスタッフですが、その7年以上の仕事は若い選手たちの中に残り続けるはずです。
そして私たちサッカーファンにとっては、こんな問いが残ります。
・クラブの“文化”をつくるのは、監督なのか、アカデミーなのか、それともクラブ全体なのか。
・コーチやアナリストのような「縁の下の力持ち」を、どこまで意識して観戦しているだろうか。
・もし自分が選手なら、どんなコーチと一緒に成長していきたいだろうか。
ジョー・シュルバーグのラピッド・ウィーン挑戦は、こうした問いを私たちに投げかけてくれます。
「旅を続けるコーチたち」から学べること
サッカーの世界では、監督もコーチも、選手と同じように国境を越えて移籍します。
今回のケースでは、ノリッジ・シティというイングランドの街から、ウィーンという歴史ある都市へ。
言葉も文化も違う場所で、シュルバーグは再び「学び、教える人」としての日々を送ることになります。
小学生の読者のみなさんにとっては、「好きなことを続けていると、いつか外国でその仕事ができるかもしれない」という、少しワクワクする話かもしれません。
大人の読者にとっては、「積み重ねてきた経験と人間関係が、次のチャンスを連れてくる」という、キャリアのヒントにも見えるでしょう。
サッカーは、ピッチ上の11人だけでは成り立ちません。 その裏側には、分析を行うアラン・アラックのようなアナリスト。
育成とトップチームをつなぐシュルバーグのようなコーチ。
そして、その全体を束ねるヨハネス・ホフ・トールップのような監督がいます。
彼らの「旅」を追いかけてみると、サッカーはもっと立体的に、もっと深く見えてくるはずです。
最後に、一つの言葉を添えて締めくくりたいと思います。
「Football is a game of connections – between passes, between players, and between people.」
「フットボールとは“つながり”のゲームである。パスとパスのつながりであり、選手同士のつながりであり、そして人と人とのつながりなのだ。」
