トリノFCはなぜ中位に甘んじ続けるのか?伝統と改革の狭間で揺れるクラブの現在地
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なぜトリノは「中間の沼」から抜け出せないのか?クラブ改革の難しさに迫る
今季のイタリア・セリエA、トリノFCはまたしても「目標が曖昧なまま、改革と変化に苦戦している」という厳しい現実に直面しています。 昨シーズン終了時、オーナーであるウルバーノ・カイロ氏が「“C’è tutta l’intenzione di fare le cose fatte bene, cercando di puntare a un obiettivo importante. Senza poi stare lì a dire troppi obiettivi, è meglio farli”
(すべてをしっかりとやる意志はある、重要な目標に向かいたい。あれこれ目標を掲げるより、まず実現する方が良い)」とメディアに残した言葉。 一見誠実に聞こえるこの「目標の非公表」ですが、実はクラブの停滞感の象徴として、サポーターからは不満の声が高まっています。
パラダイムシフトの難しさ〜バローニ監督とシステムの「軋轢」
新監督であるマルコ・バローニは、攻撃的なサッカーを志向し、「“Parto dal gol e poi torno indietro. Il calcio è andare a fare gol.”
(ゴールから逆算する。サッカーとは得点を目指すことだ)」とシーズン前に語っていました。 クラブも夏の移籍市場では、トゥールーズから7得点のアブクラル、さらにゴールに絡む力を持つンゴンゲやアンジョリンを獲得。 新しい4バック、あるいは4-2-3-1や4-3-3といったエネルギッシュで縦に速いスタイルへと舵を切るはずでした。
ところが…。 蓋を開けてみれば、期待の新戦力の多くがローテーションから外され、アブクラルも開幕戦後はほぼベンチ。 実際の試合内容も「バローニ流」からは遠く、平均xG(期待得点)はたったの0.94、リーグ13位という低調な攻撃力。 なぜ理想と現実がこれほどまでにズレてしまったのでしょうか。
| 観点 | ユリッチ体制(従来) | バローニ体制(今季) | 評価 |
|---|---|---|---|
| システム | 3-5-2(堅守速攻) | 4バック試行→3-5-2回帰 | △ 変化失敗 |
| 攻撃スタイル | ロングカウンター主体 | 縦に速いポジショナル志向 | △ 定着できず |
| 平均xG | 中位圏レベル | 0.94(リーグ13位) | △ 低下 |
| 守備安定性 | 失点管理優先 | ゼロ失点試合複数(ローマ・ナポリ等) | ◎ 維持 |
| 新戦力活用 | 既存選手中心 | アブクラル・ンゴンゲ等がベンチ常連 | △ 活かせず |
| 順位推移 | 9〜11位で安定 | 現状も中位(10位前後) | ○ 降格なし |
伝統の3バック…でも根付くのは「守りの意識」と停滞感
原因の1つは「伝統の継承」と「変化への拒否反応」ではないでしょうか。 トリノは長年、3バックとウイングバックを軸とする堅守速攻にこだわってきました。 2011年からヴェントゥーラ監督時代、その後のユリッチ体制でも大きな変革はなく、派手な例外は2016~17年のミハイロビッチ時代くらい。 その文化がチームの隅々まで根付いているため、急激なシステム変更には大きな戸惑いやリスクがつきまといます。
事実、今季第1節・インテル戦では、あっけなく5失点。 守備が混乱し、バローニ監督は「高いライン、攻撃への切り替え」を早々に断念。 結局、早々に「お馴染みの3-5-2」へ回帰せざるを得ませんでした。
- システム変更は段階的に導入する — 開幕戦で5失点した原因は急激な4バック移行。既存文化と新スタイルの橋渡し期間を設け、試合ごとに習熟度を測りながら移行する。
- 新加入選手の起用を数試合継続する — アブクラルのようにベンチに置き続けると選手の自信とチーム戦術理解が育たない。「2〜3試合は使い続ける」方針をスタッフ間で共有する。
- 明確な目標をシーズン前に全員で共有する — 「目標を言わない方が良い」という姿勢はチームの方向性を失わせる。目標を言語化してロッカールームに掲示し、全員が同じビジョンを持つ環境をつくる。
システムを戻しても…守備の数値は改善しても攻撃は「貧血」状態
3バックに戻したことで、ゼロ失点で凌ぐ試合(ローマ、ナポリ、ボローニャ、ユヴェントス)も出てきました。 「“La squadra aveva trovato una solidità, una compattezza. Non si può avere un momento di amnesia perché poi butti al vento una gara che era in equilibrio”
(チームは安定感と一体感を見つけていたが、一瞬の気の緩みでバランスの取れていた試合を無駄にしてしまうこともある)」(バローニ監督談) 確かに守備組織は形になりつつありますが、攻撃の分野では目立ったインパクトは見られません。
むしろ「前線がシステムに馴染めない」「選手と戦術のミスマッチ」が浮き彫りに。 夏に期待された補強選手も多くが出場機会に恵まれず、パスミスや連携不全から失点するケースも目立ち、チーム全体が「どっちつかず」の状態に沈んでいます。
- システムへの「慣れ」が逆に足かせになる現象を観察する — トリノの選手はカウンター守備に慣れすぎて積極的に前へ出るプレーを怖がっている。わが子が一つのプレースタイルだけに固執していないか観察してみよう。
- チーム全体が同じ方向を向かないと個人の力は活きないと気づく — 優秀な補強選手がいても使われなければ意味がない。チームとして「何を目指すか」を揃えることが結果につながると伝えよう。
- 失敗を恐れず挑戦し続けることがスタイルを育てる姿勢を褒める — 新しいことに挑んで一度失敗しても粘り強く取り組む姿勢こそ成長の源。試合で失敗しても前を向く子どもの姿勢を積極的に褒めよう。
進化と迷走のはざまで:トリノは「現状の延長線から」抜け出せるか?
ここで立ち止まって考えてみたいのは、「本来トリノが目指すべき姿」はどこにあるのか、という問いです。 今季のように「どうせ中位で終わる」という諦念と、「最低限降格を免れる」ことだけを目指す姿勢…。 それは本当にクラブが、そしてサポーターが求めている姿なのでしょうか。
「目標がなければ、成長もない」。 残念ながら昨季10位、10位、9位、11位というお決まりの順位ループに、今年もまた引きずり込まれそうな気配があります。 選手1人ひとりは、低いポジションからのカウンターに慣れ切り、「守るだけ」「負けないだけ」で満足していないでしょうか? バローニ監督が求めるより攻撃的で高いリスクを伴うスタイル——これにチーム全体で挑戦する勇気と、失敗を恐れずにやり切る覚悟が今、強く試されています。
選手も監督も…「今まだ途上」ならば、何が次の一歩となりうるのか?
サッカーは時に、「勝つこと」よりも、「変わること」の方がはるかに難しいスポーツです。 トリノにも、パッションとポテンシャルを備えた若手(カサデイやアンジョリン、ンゴンゲら)が在籍し、バローニ流のスタイルは一瞬ではありますが攻撃の躍動感も感じさせます。 けれど、「現状維持」に慣れた組織は、ときに新しい冒険を恐れ、自分たちが本当に変わることを許さない空気に包まれてしまうことがあるのです。
あなたなら、今のトリノ、何を一番最初に変えてみたいでしょうか? オーナーや監督、そして現場の選手たちの想い。 サポーターの「もっと上へ!」という願い。 そのすべてが同じ方向へ向かう瞬間に、きっと本当の変革が訪れるはずです。
トリノの行く先は?サポーターに問い続ける「理想と現実のギャップ」
世界中のフットボールクラブは「アイデンティティー」と「チャレンジ精神」の間で揺れながら進化していきます。 トリノもまた例外ではありません。 「堅守の伝統」それ自体は価値のあるものですが、それに固執しすぎた先に「成長なき停滞」しか待っていないのかもしれません。
バローニ監督が「システムを諦めず、選手たちが真に挑戦するチーム」への進化を本気で望むなら、サポーターもまたクラブの「現状維持」ではなく、「変化」を受け入れて声援を送り続ける強さが求められるのではないでしょうか。
最後に、今のトリノの状況を象徴するかのような名言で締めくくります。
「Per aspera ad astra.」(困難を乗り越えて、星へと)
トリノの未来が、ただの「平凡」ではなく、本物の輝きへと向かう道であることを願ってやみません。
