ルカーニアの育成サッカーに見る「勝利」と「選択」のあいだにあるもの
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「勝ったから正解」では終わらせない──ルカーニアの育成年代がくれた、いくつもの問い

アウェーのトルヴェで、Lykos U17が4点目を決めた瞬間、ベンチから飛び出した選手たちの輪の中に、ひとりだけ立ち尽くすように空を見上げている選手がいたかもしれません。
スコアは4-2。
この勝利で、彼らは地域U17リーグ3連覇を「数学的に」確定させました。
残り2試合を残して、2位のPGS Don Boscoに9ポイント差。
引き分けでもよかった試合で、彼らは勝ちにいき、そして勝ちました。
ここまでくると、結果だけを見れば「強いチームが順当に勝った」という一文で終わらせることもできます。
けれど、育成年代のサッカーを「結果」だけで切り取ると、そこにあったはずの、たくさんの「考え」や「迷い」や「選択」を取りこぼしてしまうように感じます。
この週末、ルカーニア地方の育成カテゴリーで起きたことを眺めながら、あえて「なぜ」「どうして」という視点で立ち止まってみたいと思います。
Lykos U17の三連覇に潜む、たったひとつの「別の選択肢」
Lykos U17は、スポルティング・マルコニアを4-2で下し、地域U17リーグ3連覇を達成しました。
監督グアイタにとっても、チームにとっても3年連続のタイトル。
試合展開としては、モンターノとトゥッチーノがそれぞれ2得点ずつ決める打ち合いになりました。
ただ、この試合にはひとつ、興味深い前提がありました。
「引き分けでも優勝が決まる」
つまり、キックオフの時点で彼らは、少なくとも3つの方向性を選べる状況にあったはずです。
- 安全に引き分けを取りにいくプラン
- いつも通り勝ちにいくプラン
- 結果よりも内容やチャレンジを優先する特殊なプラン
表に出るのは「4-2で勝利、3連覇」という結果だけです。
けれど、その裏では、どこかのタイミングで、スタッフと選手たちが「今日をどういう1日にするか」を決めていたはずです。
例えば、もしあなたがこのチームの選手なら、どう考えるでしょうか。
- リスクを抑え、確実にタイトルを決めたい
- 3連覇の試合だからこそ、いつも以上に攻撃的にいきたい
- 普段出られない仲間にも、ピッチに立ってほしい
どれを選んだとしても、「正解」と「不正解」で切れる話ではありません。
大切なのは、どんな考えのもとで、その選択にたどり着いたのかというプロセスです。
Lykosは、結果として4点を奪って勝ち切りました。
ただ、その影には、もしかすると「リードしてからリスクをどうコントロールするか」「選手交代をどのタイミングで行うか」「タイトルがかかった状況で、若い選手をどこまで使うか」といった、小さな決断の積み重ねがあったはずです。
育成年代でタイトルを重ねているクラブやチームを見るとき、スコアやトロフィーではなく、「どんな場面で、どう迷い、どう決めたか」に目を向けてみると、見えてくる景色が変わってきます。
| 場面 | 勝利・結果優先の選択 | 成長・経験優先の選択 | 育成上の考え方 |
|---|---|---|---|
| 優勝確定試合の戦い方 | 引き分けを狙いリスクを最小化する | 攻撃的にいき、控え選手にも出場機会を与える | ◎ どちらを選ぶかの「理由」を言葉にできるかが重要 |
| タイトル争い終盤の起用 | レギュラーのみで勝ち点を積む | 将来性のある選手を試合で試す | ○ 短期と長期の目標をどう両立するかが問われる |
| 大量失点・最下位の状況 | △ つらいと感じてモチベーションが下がる | ◎ 強い相手との対戦を成長の材料として捉える | ◎ 指導者と保護者のかかわり方が選手の見方を変える |
| 降格確定後の残り試合 | 勝ち点を狙い続けベストメンバーを維持 | 戦術・システムを試し来季への準備を優先する | ○ 何を目的にするかを明示すると選手の集中が変わる |
| 代表選考の落選 | △ 「自分はダメだ」と評価が下がる | ◎ 「何が足りなかったか」を自問し次の目標を設定する | ◎ 選ばれた/選ばれなかった事実より、その後の行動が重要 |
| 中位チームのシーズン終盤 | △ 順位が動かず目標を失いがち | ◎ 個人の成長目標を設定し来季に向けた実験を行う | ◎ 結果以外の目標設定が選手のモチベーションを維持する |
勝ち続ける側と、追いかける側──U15 Invicta MateraとLykosの一歩差
同じ地域U15では、Invicta MateraとLykosがわずか1ポイント差でトップを争っています。
Invicta Materaは週末に5-1で快勝。
5得点すべて違う選手が決めたという事実は、「誰がエースか」というより「チーム全体でどのようにゴールに向かうか」というテーマを思わせます。
Lykos U15も負けじと4-0で勝利し、首位を1ポイント差で追走しています。
シーズンも終盤。
ここからの一戦一戦が、タイトルレースの行方を大きく左右していきます。
こうした状況で、選手や指導者には、どんな「選ばなければならないこと」が増えていくのでしょうか。
- 順位を見て戦い方を変えるか、いつも通りを貫くか
- 相手の弱点を徹底的に突くのか、自分たちのスタイルを試し続けるのか
- 勝負がかかる時期に、出場時間の少ない選手にどうチャンスを与えるのか
日本の育成年代でも、似たような局面はたくさんあります。
例えば、高円宮杯や地域リーグの終盤、昇格や残留がかかった試合。
保護者として、指導者として、あるいは選手として、どこまで「結果」に寄せていくのか。
それとも、「今ここ」の経験を、3年後、5年後につながるものにするのか。
どちらかだけが正しいわけではありません。
ただ、「自分たちは、なぜこの選択をするのか」を言葉にできるかどうかが、チームの「軸」をつくっていくようにも思えます。
- 試合前に「今日の目標は結果か内容か経験か」をチームで宣言してから戦う — たとえば「今日は勝ちにいく」でも「今日はAシステムを試す」でも、目的を明示することで選手の判断軸が揃い、試合後の振り返りも具体的になる
- 控え選手への起用基準を言語化して本人に伝える習慣をつける — 「次の試合で何を見せてくれたら起用するか」を具体的に伝えることで、選手は選ばれるための行動を自分で考え始め、指導者への信頼も高まる
- 敗戦後の振り返りで「審判や相手のせい」以外の視点を1つ以上挙げさせる — 「自分たちが変えられたことは何か」を問う質問を最初に出すことで、選手が自己決定感を持って次に向かえる思考習慣をつける
歴史的な挑戦と、届かない手──Az Picerno U15とPotenza U15の同じ90分
一方、Lega ProのU15カテゴリーでは、Az PicernoとPotenzaが、まったく違う景色の中で戦っています。
Az Picerno U15はCosenzaに2-0で勝利し、プレーオフ圏内の3位をしっかりキープしました。
勝ち点差は5位と11ポイント。
ルカーニアのクラブにとって、「プレーオフ圏内を当たり前に狙える」という状況自体が、長い歴史の中でも特別な出来事だとされています。
そんな「歴史的」とも言えるシーズンの中で、選手たちは何を感じながら試合に入っているのでしょうか。
「勝てば夢に近づく」
そう聞くとワクワクする反面、プレッシャーにもつながります。
特にU15という年齢は、まだ「自分の感情」をコントロールしきれないことも多い年代です。
それでもCosenzaを相手に、集中を切らすことなく2-0で勝ち切った背景には、「感情を飲み込んでプレーする技術」も育ってきているのかもしれません。
一方で、Potenza U15は首位Siracusaに1-2と惜敗しました。
終盤にLeoneの得点で逆転を許し、その場面については判定への疑問も残るような状況だったと伝えられています。
この結果、プレーオフ圏との勝ち点差は12に広がりました。
試合を終えたロッカールームでは、きっと悔しさや納得のいかなさが渦を巻いていたはずです。
そんな中で、選手やスタッフには、いくつかの「分かれ道」が現れます。
- 判定に意識を向け続けるのか、自分たちのプレーに目を向け直すのか
- プレーオフ進出にこだわり続けるのか、残り試合を「次のステージへの準備」と捉えるのか
- 「届かなかった現実」をどうチームの物語に組み込むか
もしあなたがこのチームの選手だったら、どう考えるでしょう。
「審判が…」で終わらせるのか。
それとも、「あの時間帯に、他にできることはなかったか」と自分のプレーを振り返るのか。
答えは、ひとりひとりの中に違う形で存在していていいと思います。
大事なのは、そこから目をそらさないこと。
「なぜ失点したのか」「なぜ勝ち点を落としたのか」を、誰かに教えてもらうのではなく、自分で問い続ける姿勢が、次の選択につながっていくのではないでしょうか。
- 観戦中に「自分があのキャプテンなら今日の試合をどう戦うか」と想像する — スコアや選手名ではなく、その試合のチームが直面している選択に思いを巡らせることで、サッカーの見方が戦略的な視点に変わる
- 選ばれなかったとき・出場できなかったときに「何が足りなかったか」を1つ書き出す — 悔しさを感情のままで終わらせず、具体的な改善点を1行でも書くことで、次の挑戦への準備が始まる
- 保護者として結果よりも「どんな選択をしたか」を試合後に聞く — 「勝った負けた」ではなく「今日はどこで迷ったか」「何を優先してプレーしたか」を問いかけることで、子どもが自分の判断を振り返る習慣が育まれる
最下位から見える景色──Potenza U13の「今」と日本のU13
全国規模のU13大会、グループ6。
Potenza U13はCampobassoに1-4で敗れ、現時点で最下位に沈んでいます。
こうした状況に置かれているチームを見たとき、外からはつい「厳しいシーズンだな」とだけ捉えてしまいがちです。
けれど、当事者である選手たちにとっては、そこにも「選択」があります。
- 負けが続く現実を、ただ「つらいシーズン」とラベリングするのか
- どんな相手とも本気で戦える場にいることを、自分の成長の材料として捉えるのか
- チームとして結果が出ない中で、自分は何を積み上げるのか
日本のU13年代でも、同じようなことが起きます。
中学に入ってすぐ、フィジカル差も激しく、スコアが大きく開く試合も珍しくありません。
そのとき、指導者はどんな言葉をかけるのか。
保護者は、どう支えるのか。
そして選手自身は、どこに目線を置くのか。
「結果は気にするな」と言うのは簡単です。
でも、スコアボードは、否応なく「現実」を突きつけてきます。
その現実をどう受け取り、どう「次の一歩」に変えていくか。
そこで問われるのは、「うまくいかないときに何を諦めずに持ち続けるか」なのかもしれません。
トーナメント前の最後の選考──LND Basilicata代表が抱える静かなプレッシャー
LND Basilicataの各カテゴリー代表は、3月27日に地域トーナメントへ向けて出発し、28日にUmbriaとの初戦を迎えます。
今はちょうど「最後の選考」が進んでいる時期です。
こうした代表活動には、いつも複雑な感情がつきまといます。
- 選ばれる側の喜びと責任
- 選ばれなかった側の悔しさと空白
- 選ぶ側の迷いと覚悟
指導者は、ただ「うまい選手」を並べればいいわけではありません。
ポジションバランス、グループとしてのまとまり、短期間で機能する戦い方。
限られた時間の中で、いくつもの要素を同時に考えながら、最終的なメンバーを決めなければいけません。
もし自分が、その代表の指揮を任されたとしたら、どうするでしょうか。
「今、一番強いチーム」をつくりにいくのか。
「この経験で、一番伸びる選手たち」を連れていくのか。
そのどちらかではなく、その両方をギリギリのところで両立しようとするのか。
どんな選び方にも、誰かの喜びと、誰かの涙がセットでついてきます。
だからこそ、「なぜこのメンバーなのか」を、自分なりに説明できるかどうかが、指導者にとっての大きな問いになります。
「楽な試合」など存在しない──順位表の裏にある、いくつもの戦い方
地域リーグのU17、U15を見渡すと、首位を快走するチームもあれば、残留争いの中でもがくチームもあります。
Invicta Matera U17、Asso Potenza、Franco Selvaggi、Progress Villa d’Agri、Hellas Vulture、Peppino Campagna、JSA Lagonegro、PGS Don Bosco、Hellas Vulture U15……。
それぞれの名前の裏には、それぞれの事情と、それぞれの「今」があります。
例えば、すでに降格が決まっているチームは、残り試合をどう位置づけるのでしょうか。
- 来季に向けて、下のカテゴリの選手を積極的に起用する
- 最終節まで、ベストメンバーで一つでも多く勝ち点を積みにいく
- 戦術やシステムを、思い切って変えてみる
一方、タイトル争いから離れている中位チームには、また違った「問い」があります。
- 順位が大きく動かない中で、何をモチベーションにするか
- 個人の成長とチームの成長のバランスをどう取るか
- 来季を見据えた「実験」を、どこまで試合の中で行うか
勝っているチームだけが、特別な決断をしているわけではありません。
順位表のどこにいても、毎週のように「選ぶこと」と向き合わされています。
日本の育成年代でも、同じです。
中学3年の秋、すでに進路が決まっている選手と、これから勝負をかける選手が同じピッチに立つ。
高校3年、最後の大会が終わっても、リーグ戦はまだ続いている。
そうした「温度差」がある中で、どうやってひとつのチームとして戦うのか。
そのときこそ、「今、この仲間と、何を大切にしてサッカーをするのか」という問いが、静かに突きつけられているのかもしれません。
答えを急がないサッカー
もし自分が、あのピッチにいたなら

ルカーニアの週末に起きた出来事を、少し離れた場所から眺めてきました。
3連覇を決めたチーム。
歴史的なプレーオフ進出を狙うチーム。
届かない現実と向き合うチーム。
最下位で苦しむチーム。
代表選考を控える選手たち。
どの物語にも、共通して流れているものがあります。
それは、「ひとつの試合の裏側には、いつもいくつもの選択肢があった」ということです。
もし、自分がLykos U17のキャプテンだったら。
「引き分けで優勝」が見えている試合を、どう戦うか。
もし、自分がPotenza U15のセンターバックだったら。
終盤の微妙な判定のあと、どんな声をかけ、どんなプレーを選ぶか。
もし、自分が最下位のPotenza U13のボランチだったら。
4失点した試合のあとに、翌日のトレーニングをどう迎えるか。
もし、自分が代表監督だったら。
最後の1枠を、誰に託すか。
どれも「これが正解」というひとつの答えはありません。
大切なのは、そうした場面に出会ったとき、「自分ならどう考えるだろう」と一度立ち止まってみることなのだと思います。
日本でサッカーをする私たちにとっての「問い」
日本の育成年代の現場でも、同じような局面が、日々どこかで起きています。
- 大会の最終節で、勝てば優勝、引き分けでも準優勝が決まるとき
- 強豪校相手に、守りを固めるのか、普段通りのスタイルでぶつかるのかを迷うとき
- 結果が出ないシーズンのなかで、何を目標として練習に向かうのかを考えるとき
- 誰かが選ばれ、誰かが選ばれない選考会のあとに、チームとしてどう向き合うのか
その一つひとつの場面で、選手、保護者、指導者が、それぞれに「なぜ」「どうして」を口にできる環境があるかどうか。
それが、サッカーを通じて育っていくものの大きさに、少しずつ影響していくような気がします。
「こうすべきだ」と誰かが即座に答えを教えてくれる世界は、ある意味で楽です。
けれど、ピッチに立って最後に決めるのは、いつもプレーする本人です。
勝ち負けの陰に隠れた、無数の「選択」と「迷い」に、そっと目を向けてみること。
そこからまた、次の一歩が見えてくるのかもしれません。
そして、その一歩がどんな方向であっても、自分で考え、自分で選んだ足跡であれば、きっとサッカーの記憶として長く心に残り続けるはずです。
週末のピッチに立つとき、画面の前で試合を見るとき、ふと立ち止まりたくなったら、こんな問いを心の片隅に置いてみてはいかがでしょうか。
「もし、自分があの場面にいたなら、何を選ぶだろう」
その問いかけ自体が、すでにサッカーの一部になっているのだと思います。
