セリエAの若い守備陣3選手の選択と迷いを通じてサッカーの守備哲学を考察するコラムのイメージ画像

安い守備陣の裏側にある「選択」と「迷い」をどう受け止めるか

DEFINITION
守備の選択とは(DF論・育成視点)
失敗のあと何を変え何を変えないか、リスクとカードをどこで線引きするか、控えの時間をどう使うか——守備者に問われるのは技術だけでなく自分なりの選択の積み重ねだ。安いDFと呼ばれる選手の裏側には、数字に表れない思考と決断がある。

「安い守備陣」を選ぶとき、僕らは何を見ているのか

イタリアのセリエA、27節を前にしたファンタジーゲームのニュースに、3人の守備陣の名前が並んでいた。

ミランのデ・ウィンター。

パルマのトロイロ。

フィオレンティーナのフォルティーニ。

共通しているのは、いわゆる「低コスト」で手に入るディフェンダーだということ。

ただ、名前の裏側にあるのは、単なる「値段」ではない。

序列の中で戦っている選手、自分の評価を揺らしながらもピッチに立つ選手、出たり出なかったりを繰り返す若い選手。

ファンタジーゲームの世界では「コスパの良い守備」として語られる彼らの選択は、現実のサッカーを考えるうえで、意外と深いヒントをくれる。

ミラン・デ・ウィンター「最初の失敗」とどう付き合うか

悪いスタートから、序列を上げていくという仕事

ミランのベルギー人DF、デ・ウィンターは、今季のスタートでいきなりつまずいている。

ナポリとのスーパーカップで、ホイルンドを相手に大きく崩れた。

あの試合を見た人にとって、彼は「大舞台でやらかしたDF」として記憶されていてもおかしくない。

そこから秋にかけて、彼は少しずつ評価を取り戻し、ローマ戦でのゴールもあって、守備陣の序列を上げていった。

今は「レギュラーではないが、最初に名前が挙がる控え」になっている。

そして27節、ガッビアが筋肉の違和感でベンチスタートになる可能性があり、クレモネーゼ戦で再び先発に戻ってくるかもしれない。

COMPARISON / 3選手の状況・課題・選択の比較
選手 直面した課題 選んだ対応 評価
デ・ウィンター(ミラン) スーパーカップで大失敗、序列最下位へ 積極性(ローマ戦ゴール)を手放さず序列を回復 ◎ 強みを残して修正
トロイロ(パルマ) 2度の退場・3枚イエローで荒いDF評価 攻撃的な守備を貫き、サン・シーロで決勝点 ○ リスク承知で継続
フォルティーニ(フィオレンティーナ) 出場機会が波打ち、ベンチ期間が続く 呼ばれたときに大きく崩れず準備継続 ◎ 控え期間の質が高い
デ・ウィンター(課題面) 最初の失敗で萎縮するリスク 縦パス・前への積極性を維持することを選択 ○ 縦への判断を継承
トロイロ(課題面) カード蓄積でのチームへのリスク チャレンジを減らすか貫くか、線引きを模索中 △ 最適解は探索中
◎ 課題を乗り越え評価向上 / ○ 継続中・方向性は正 / △ まだ調整段階

もし自分がデ・ウィンターの立場なら

最初に大きな失敗をしたあと、どう考えるか。

おそらく頭の中には、こんな選択肢が浮かぶはずだ。

  • 「あの試合が怖い」から、リスクを避けてプレーする
  • 失敗をきっかけに、自分の弱点を徹底的に見直す
  • 試合に出られない時期に、練習でコーチの信頼を取り戻す

答えは1つではない。

現実には、その全部を行ったり来たりしながら、揺れたまま日々を過ごしているのかもしれない。

ただ、事実として見えるのは、「序列が上がった」という結果と、「今は大事な控えとして信頼されている」という位置だ。

そこにたどり着くまで、どれだけの「自分との対話」があったのか。

FOR COACHES / FOR COACHES
失敗した選手に「何を変え、何を変えるな」と伝えられるか
  1. ミス直後の面談で「残す強み」を先に言う — 次は慎重により先に「あなたのこの積極性は絶対に消すな」と伝えることで、萎縮して全プレーが小さくなるミス恐怖縮小を防ぐ
  2. ベンチ期間の選手に具体的なテーマを1つ与える — 次に出たときこれをやってみろという具体的なテーマを渡すことで、漠然とした待機から目的のある準備期間に変わる
  3. カードの多い選手には「どこを変えてどこは変えるな」を映像で話し合う — カードを減らすためだけに守備を大人しくさせると、相手を止められないDFが完成する。リスクとカードの線引きを選手と一緒に引く
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日本の選手に重ねてみる

日本の育成年代でも、最初の全国大会やセレクションでの失敗が、その後のキャリアに大きな影響を与えることがある。

大きなミスをしたあと、多くの選手は「次こそはやらないように」と考える。

ただ、その「やらないように」は、ときにプレーを小さくしてしまう。

・縦パスをやめて、横パスとバックパスばかりになる

・前で潰しに行かず、下がって様子を見ることが増える

ミスは減るかもしれないが、自分の特徴まで消えていく危険もある。

デ・ウィンターが、ローマ戦でゴールを決めるような積極性を手放さなかったのは、「失敗のあとに、何を残して何を変えるか」を自分で選んだからかもしれない。

もし自分だったら、どこを変え、どこを変えずに進むだろうか。

パルマ・トロイロ「カードの多さ」は本当に悪なのか

FOR PLAYERS & PARENTS / FOR PLAYERS & PARENTS
ベンチの時間と失敗の後を、どう過ごすかで変わる
  1. 大きなミスの後、「残す特徴」を1つだけ決める — ミスを恐れて全部変えようとすると自分の特徴まで消える。縦への積極性は残すなど1点だけ決め、それ以外の修正に集中する
  2. ベンチ期間は「次に出たときのテーマ」を自分で設定する — 監督から言われるのを待つのではなく、次は相手の背後を先に読むなど具体的なテーマを自分で決めて練習から試す
  3. 「18人目」の立場では、出場した試合の映像を必ず自分で振り返る — 起用された試合で大崩れしないことがスタメン昇格の最低条件。振り返りで良かった判断を1つ言語化する習慣が準備の質を上げる

2回の退場と、決勝ゴールという矛盾

パルマのアルゼンチン人DF、トロイロは、イタリアでの1年目が「きれい」とは言えない。

2度の退場、3枚のイエローカード。

安定感という意味では物足りず、「荒いDF」というラベルを貼られても仕方がない数字だ。

それでも、彼はサン・シーロでミラン相手に決勝点を決め、評価を一気に変えた。

セットプレーの強さ、1対1でのしつこいマーク。

まだ2003年生まれの若さだが、プレーからは迷いよりも「自分はこう守る」という主張が強くにじむ。

そして27節、パルマはホームでカリアリと対戦する。

カリアリは直近3試合ノーゴール。

相棒のセンターバック、ンディアイェは鼠径部のケガで離脱中。

トロイロは守備の中心として、またピッチに立つことになる。

攻撃的な守備を、どこまで貫くか

トロイロは、数字だけ見れば「カードが多く危なっかしいDF」だ。

だが視点を変えると、そこには別の選択も浮かんでくる。

  • チャレンジを減らしてカードも減らすが、自分の強みも薄まる道
  • リスクは承知で、前で潰し続ける道

どちらが正しいとは言えない。

プレースタイルや、チームの戦い方、監督の求めるものによって答えは変わる。

ただ、1つの決勝ゴールが彼の評価を変えたことを考えると、「ミスを恐れずに前に出るDFを、チームは必要としていた」とも受け取れる。

日本の守備者が迷いやすいポイント

日本のセンターバックやサイドバックは、カードをもらうことを強く恐れる傾向がある。

・ペナルティエリア付近で、相手を自由に前を向かせてしまう

・少し接触があっただけで、すぐに手を引いてしまう

もちろん、安易なファウルは避けるべきだ。

しかし、避け続けた結果、「相手を止められない守備者」になってしまうなら、それはそれで大きな問題になる。

トロイロのようにカードが多い選手は、反面教師にも、学びの材料にもなる。

自分は、どこまでリスクを取りに行く守備者なのか。

カードを減らすために、何を変え、何は変えたくないのか。

そこを意識的に選べるかどうかで、「ただ大人しくなっただけの守備」と「賢くなったけれど、強さは残る守備」の差が生まれてくる。

フィオレンティーナ・フォルティーニ「出たり出なかったり」とどう向き合うか

若手にとっていちばん難しい時間

フィオレンティーナの右サイドバック、フォルティーニは2006年生まれの若い選手だ。

今季は、スタートの頃はなかなか出番がなかった。

しかし、ゴゼンスのケガもあり、第8節から第18節にかけてはコンスタントに起用されるようになった。

そこからまたベンチに戻る時期があり、それでも出場すれば大きく低い評価を受けた試合は少ない。

ゴールやアシストといった「目に見えるボーナス」はまだないが、与えられた仕事をきちんとこなし続けている。

27節、右サイドのレギュラーであるドドが出場停止となり、アウェイのウディネーゼ戦で再びスタメンの可能性が高まっている。

「控え」の時間に、何をしていたかが問われる

若手にとって、連戦で使われる時期よりも難しいのは、「またベンチに戻る瞬間」かもしれない。

・なぜ自分は外れたのか

・もうチャンスは来ないのではないか

・監督にどう見られているのか

頭の中に、答えの出ない問いが次々に浮かぶ。

その中で、選手は何かを選ばなければいけない。

  • 不満を抱えたまま練習を「こなす」のか
  • 次に出たときのために、具体的に自分のテーマを決めて取り組むのか

フォルティーニは、チーム事情で再びチャンスが巡ってきたとき、大きく崩れることなくプレーしてきた。

それは、「呼ばれたときに準備ができていた」ということでもある。

控えの時間は、外から見えない。

だからこそ、その時間の過ごし方が、次にピッチで見えたときに一気にあらわになる。

日本の若い選手にとっての「18人目」の意味

日本のクラブや学校チームでも、「ベンチには入るが、なかなか出番がない選手」は多い。

スタメンでもなければ、完全な構想外でもない。

いわば「18人目」「19人目」あたりのポジションだ。

この立場は、実はものすごく難しい。

・スタメンの選手と比べてしまう

・自分の実力を過小評価したり、逆に過大評価したりする

・監督の意図を「起用された/されない」だけで判断してしまう

フォルティーニのように、出番が続く時期とベンチの時期を繰り返しながらも、評価を大きく落とさずにいる若手には、「出場していない時間に何を考えているか」という問いがつきまとう。

日本の選手も、自分が「18人目」だったとき、その時間をどう使うかで、1年後の立ち位置が大きく変わる可能性がある。

「安い守備陣」を選ぶという行為が映し出すもの

ファンタジーゲームの目線と、現実の目線

この物語の元になっているのは、ファンタジーゲームで「低コストの守備陣をどう選ぶか」という話だ。

そこでは、「価格」と「成績」が主な判断基準になる。

・クレモネーゼが最近5試合で1ゴールしか取れていないから、ミランのDFは失点が少ないだろう

・カリアリが3試合連続無得点だから、パルマのDFは狙い目だろう

・ドドの出場停止で、フォルティーニは出場機会を得やすいだろう

どれも理にかなっているが、その裏には「数字に表れないもの」がたくさん隠れている。

  • デ・ウィンターが、最初の失敗から何を学んだのか
  • トロイロが、カードと引き換えに何を守ろうとしているのか
  • フォルティーニが、ベンチの時間にどんな準備をしていたのか

実は僕たちが「安いけれど買いだ」と判断したとき、その影には、彼らの見えない思考や選択が積み重なっている。

日本で同じ状況に立ったとき、どう考えるか

日本の育成年代やアマチュアでも、よくある場面に置き換えてみることができる。

  • 大きな大会でミスをして、しばらくスタメンから外れたセンターバック
  • ファウルを怖がらずに前に出るが、その分カードも多い守備者
  • レギュラーのケガや出場停止で、久しぶりに先発のチャンスをもらったサイドバック

もし自分や、自分の子ども、教え子がその立場になったとしたら、どう声をかけるだろうか。

・「ミスをしないように安全に行こう」と伝えるのか

・「お前の良さはそこじゃないだろ」と背中を押すのか

・「次のチャンスまでの時間をどう使うか、一緒に考えよう」と寄り添うのか

どの言葉を選ぶかで、その選手の選択も変わってくる。

サッカーは、ピッチの中だけでなく、ピッチの外でどんな言葉を受け取り、どんな問いを自分に投げかけるかによっても形を変えていく。

結論のない問いを、そのまま持ち帰る

選手にとっての「選ぶ力」とは何か

デ・ウィンター、トロイロ、フォルティーニ。

三者三様だが、共通しているのは、「与えられた状況をそのまま受け入れるだけではなく、その中で自分なりの選択をしている」という点だ。

  • 失敗のあと、どのプレーを手放し、どのプレーは手放さないのか
  • リスクとカードの関係を、どこで線引きするのか
  • 出番がない期間を、ただ待つ時間にするのか、準備の時間にするのか

それぞれの答えは、外からははっきりとは見えない。

ただ、ピッチに立ったときの姿勢や、プレーの選び方として、少しずつにじみ出てくる。

FAQ / よくある質問
Q. デ・ウィンターが序列を回復できた理由は何ですか?
A. スーパーカップの大失敗後も積極性を手放さず、秋にかけて少しずつ評価を取り戻し、ローマ戦でゴールを決めたことが大きい。失敗のあとにリスクを避けてプレーを小さくするのではなく、失敗のあとに何を残して何を変えるかを自分で選んだ結果として、最初に名前が挙がる控えという立場を得た。
Q. トロイロのカードの多さは改善すべき欠点ですか?
A. 一概に欠点とは言えない。チャレンジを減らせばカードは減るが自分の強みも薄まる。2003年生まれの若さでサン・シーロの決勝点を決めた事実は、攻撃的な守備をチームが必要としていたことを示す。大切なのはカードを減らすために何を変え、何は変えないかを意識的に選べるかどうかだ。
Q. フォルティーニが評価を落とさずにいられる理由は何ですか?
A. 控えの時間に準備を怠らず、チャンスが巡ってきたときに大きく崩れなかったからだ。出場機会が波打つ状況でも呼ばれたときに準備ができていた状態を維持している。目に見えるゴールやアシストはなくても、与えられた仕事を着実にこなす姿勢が監督の信頼につながっている。
Q. 日本の守備者がカードを恐れすぎる問題にはどう対処すればいいですか?
A. ペナルティエリア付近で相手を自由にさせてしまうほど接触を避け続けた結果、相手を止められない守備者になってしまう問題がある。カードを減らすための改善は大切だが、避け続けた結果、自分の武器まで消えていないかを定期的にチェックする必要がある。リスクの線引きは選手と指導者が映像で話し合って決めるのが効果的だ。

あなたなら、どんな選択をするだろう

もし次にどこかの試合でミスをしたDFを見たら、あるいは久しぶりの出場機会を得たサイドバックを見たら、少しだけ想像してみてほしい。

今、この選手は、どんなことを迷い、何を選ぼうとしているのだろうか。

そして、自分が同じ立場になったとき、どんなプレーを選び、どんな言葉を自分にかけたいだろうか。

答えは急がなくていい。

サッカーの中にある、たくさんの小さな選択を見つめる時間そのものが、プレーを変え、見方を変え、少しずつ自分を変えていくのかもしれない。

ボールが転がるたびに生まれる迷いと選択を、楽しめるかどうか。

その違いが、いつかピッチの上で、静かに結果となって表れる。

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